『メタルギアソリッド』シリーズに登場するキャラクター、パス・オルテガ・アンドラーデ。
彼女の物語は、多くのプレイヤーに衝撃と深い悲しみを与えました。
なぜ彼女は「かわいそう」と言われるのか、その悲劇的な運命の裏にはどのような真実が隠されているのでしょうか。
この記事では、『ピースウォーカー』での初登場から、『グラウンド・ゼロズ』での凄惨な拷問と最期、そして『ファントムペイン』で描かれる幻の真相まで、メタルギアのパスに関する全ての謎を徹底的に解説します。
彼女の本当の姿と、物語が伝えようとしたメッセージに迫ります。
『メタルギアソリッド』のパスとは?正体と目的を徹底解説
「平和を愛する学生」は偽りの姿?初登場時の役割とプロフィール
パスが初めて登場したのは『メタルギアソリッド ピースウォーカー』(MGSPW)です。
当初、彼女はコスタリカに住む16歳の学生「パス・オルテガ・アンドラーデ」として、ビッグボス率いる国境なき軍隊(MSF)に接触します。
「パス(Paz)」という名前はスペイン語で「平和」を意味し、彼女は戦争を憎む”平和の使者”という立場で描かれました。
MSFにCIAの調査を依頼する案内役として、コスタリカの地理や文化に関する情報を提供し、プレイヤーをサポートするヒロイン的な役割を担っていました。
本名はパシフィカ・オーシャン|三重スパイとしての本当の顔
しかし、平和を願う学生という姿は、すべて偽りでした。
物語の終盤、彼女の正体が、謎の組織「サイファー」の工作員「パシフィカ・オーシャン」であることが明らかになります。
彼女はサイファーの指示でMSFに潜入しただけでなく、CIAやKGBとも繋がる「三重スパイ(トリプルクロス)」として暗躍していました。
あどけない少女の振る舞いとはかけ離れた、冷徹な工作員としての顔が彼女の真の姿だったのです。
なぜMSFを裏切ったのか?サイファーのエージェントとしての目的
パスの目的は、MSFをサイファーの統制下に置くことでした。
そのために、MSFが開発した核搭載二足歩行兵器「メタルギアZEKE」を強奪し、ビッグボスにサイファーへの恭順を迫ります。
交渉が決裂すると、MSFを核テロリスト集団に仕立て上げるため、アメリカ東海岸への核攻撃を宣言し、ビッグボスと対峙することになります。
この裏切りは、彼女が仕える主「サイファー(ゼロ少佐)」の計画を遂行するための行動でした。
パスの名前の由来は?「平和(Paz)」と「太平洋(Pacifica Ocean)」に込められた意味
パスの偽名「パス(平和)」と本名「パシフィカ・オーシャン(太平洋)」には、象徴的な意味が込められています。
彼女は平和を装いながら、実際には世界を分断し、紛争を生み出す存在(太平洋)であることを示唆しているのです。
この二面性は、”平和を維持するためには強大な抑止力が必要”という『ピースウォーカー』のテーマそのものを体現しています。
キャラクターの名前に物語の核心が隠されている点は、小島秀夫監督作品ならではの演出と言えるでしょう。
なぜパスは「かわいそう」と言われる?GZでの悲劇的な最期と凄惨な拷問
GROUND ZEROESで何があった?人間爆弾にされた経緯のすべて
『メタルギアソリッドV グラウンド・ゼロズ』(MGSV:GZ)で、パスの物語は悲劇の頂点を迎えます。
ZEKE戦で海に落下し消息不明となった後、彼女はサイファーに拘束されていました。
二重スパイの嫌疑をかけられ、キューバ南端の米軍収容キャンプで凄惨な尋問を受け続けた結果、体内に爆弾を仕掛けられ「人間爆弾」にされてしまいます。
スネークによって救出されたものの、彼女の運命はすでに絶望的な状況にありました。
海外版は特にグロい?麻酔なしで行われた爆弾摘出手術
救出後のヘリの中で、パスの体内に爆弾が仕掛けられていることが発覚します。
一刻を争う状況下で、衛生兵(メディック)は麻酔なしでの開腹手術を敢行しました。
このシーンは非常にショッキングな描写となっており、特に海外版では手術中にパスの内臓の一部が体外へ飛び出すなど、目を覆いたくなるほどグロテスクな映像で描かれています。
意識のない中で苦痛に叫ぶパスの姿は、多くのプレイヤーに強烈なトラウマを植え付けました。
2つ目の爆弾はどこに仕掛けられた?子宮に隠された非道な罠
1つ目の爆弾は摘出されましたが、悲劇はそれで終わりませんでした。
パスの体内には、もう一つの爆弾が仕掛けられていたのです。
ゲーム内のカセットテープ「チコの記録7」では、爆弾を埋め込むために「要らない臓器」が取り除かれ、「絶対に見つからない場所」に2つ目の爆弾が仕込まれたことが語られます。
この描写から、2つ目の爆弾は彼女の子宮に埋め込まれていたことが強く示唆されており、非人道的な仕打ちの極みとして描かれています。
なぜヘリから飛び降りた?スネークたちを救うための自己犠牲
MSFマザーベースへの帰還途中、意識を取り戻したパスは、2つ目の爆弾の存在を悟ります。
スネークに「もう一つある」と告げると、彼女は仲間たちを爆発に巻き込まないよう、自らヘリから身を投げ出しました。
直後、パスは空中で爆発四散し、その爆風によってスネークたちのヘリも墜落。
この自己犠牲が、MSF壊滅とビッグボスの9年間の昏睡へと繋がる、すべての悲劇の引き金となったのです。
カセットテープで語られる尋問内容|「ここでする?」の衝撃的な意味とは
パスが受けた拷問の詳細は、ゲーム内で入手できるカセットテープ「チコの記録」で克明に語られます。
そこには、スカルフェイスによる執拗な尋問に加え、繰り返し性的陵辱を受けていたことが示唆される音声が記録されています。
特に「チコの記録4」の最後でパスが発する「ここでする?」というセリフは、尋問の一環として彼女を救出に来た少年兵チコとの性的関係を強要された後の、絶望的な状況を暗示する言葉です。
このセリフは、彼女が経験した肉体的・精神的苦痛の深さを物語っています。
MGSV:TPPで生きていた?パスの幻(ファントム)が示す謎と真相
TPPで再登場するパスの正体はヴェノム・スネークが見る幻覚
『メタルギアソリッドV ファントムペイン』(MGSV:TPP)では、死んだはずのパスがマザーベースの医療施設に姿を現し、プレイヤーを驚かせます。
しかし、そこで再会するパスは生身の人間ではありません。
彼女は9年前の爆発で既に死亡しており、TPPに登場するパスは、主人公ヴェノム・スネークが見ていた「幻(ファントム)」だったのです。
なぜ幻覚を見るようになった?「もう一つの爆弾」への後悔と幻肢痛
ヴェノム・スネークがパスの幻覚を見るようになった理由は、二つあると考えられています。
一つは、2つ目の爆弾の存在に気付かず、彼女を救えなかったことへの強烈な罪悪感と後悔。
もう一つは、肉体的な要因です。
9年前のヘリ墜落事故の際、爆散したパスの骨や歯の破片がスネークの体に突き刺さっており、これが「幻肢痛」のような現象を引き起こし、パスの幻を見せていたと示唆されています。
パスの病室に隠された伏線|幻覚であることを示すサイン一覧
パスとのイベントは、それが幻覚であることを示す数多くの伏線が張られていました。
例えば、パスのいる病室では、屋内にもかかわらず屋外と同じ波の音が聞こえたり、雨の日には画面に水滴が付いたりします。
また、マップ上で病室にマーカーを付けて外に出ると、マーカーが海上、つまり何もない空間に表示されるなど、その場所が現実には存在しないことを示す演出が随所に見られました。
最後のカセットテープに遺されたメッセージ|「あなた」が示す本当の意味
パスのイベントを最後まで進めると手に入るカセットテープで、彼女の幻はヴェノム・スネークに語りかけます。
興味深いことに、テープの中で彼女は一度もスネークの名前を呼びません。
常に「あなた」という三人称で呼びかけます。
これは、パスの幻が、目の前にいる人物が本物のビッグボスではなく、その影武者(ファントム)であるヴェノム・スネークであることを知っていた可能性を示唆する、重要な伏線となっています。
悲劇だけじゃないパスの魅力|MSFでの日常とキャラクターの裏話
「パスの日記」で明かされる本当の心境|MSFでの偽りのない平和な日々
パスは冷徹なスパイでしたが、『ピースウォーカー』クリア後に入手できる「パスの日記」では、彼女の人間的な側面が描かれています。
当初はMSFの仲間たちを軽蔑していましたが、彼らと生活を共にするうちに、生まれて初めて「平和」を実感し、その日々に安らぎを感じるようになっていきます。
日記には「私の人生で最も平和な時だったのかもしれない」という言葉も残されており、スパイとしての任務と、芽生え始めた本心との間で葛藤していた様子がうかがえます。
チコとの関係性|淡い恋心とスパイとしての葛藤
MSFに所属していた少年兵チコは、パスに密かな恋心を抱いていました。
パスもその想いに気づいていましたが、自身の立場上、応えることはありませんでした。
しかし、彼女もチコのことを気にかけており、ZEKE破壊工作をチコに目撃された際には、彼を殺すことができずに見逃しています。
GZの収容所では、拷問に利用されることを恐れてチコに冷たく接しながらも、本心では彼を必死に守ろうとしていました。
キャラクターソング「恋の抑止力」とは?実現しなかった「平和の日」
「恋の抑止力」は、水樹奈々が歌うパスのキャラクターソングです。
この曲は、MSFで開催される予定だったお祭り「平和の日」に、パス、ミラー、ザドルノフの3人で結成したバンドで披露されるはずでした。
パス自身も歌の練習に励み、平和の日を心待ちにしていましたが、サイファーからの命令によって計画の実行が早まり、平和の日が訪れることはありませんでした。
この曲は、彼女が手にしたかもしれなかった、ささやかな幸せの象徴と言えるでしょう。
ダイヤモンド・ドッグズのアイドル?マザーベースのポスターの謎
TPPでヴェノム・スネークが築いた新たなマザーベースには、パスをモチーフにしたアイドル風のポスターが各所に貼られています。
GZ時点では裏切り者としてパスを憎んでいたカズヒラ・ミラーが、このポスターの掲示を許可していることから、彼の中でも複雑な心境の変化があったことがうかがえます。
この事実は、パスが悲劇的な裏切り者でありながらも、かつてのMSF兵たちから深く愛されていた存在であったことを物語っています。
小島監督の『ラブプラス』転校生構想や箕星太朗氏との関係
このアイドル風ポスターは、恋愛シミュレーションゲーム『ラブプラス』のキャラクターデザイナーである箕星太朗(ミノ☆タロー)氏が手掛けたものです。
これは、過去に小島秀夫監督がTwitterで「パスを『ラブプラス』に転校生として登場させてほしい」と冗談めかしてツイートしたことがきっかけとなっています。
ゲームの世界観を超えた遊び心あふれるコラボレーションであり、パスというキャラクターが持つ別の可能性を示唆する、興味深いエピソードです。
他作品でのパス|『スマブラSP』での衝撃的な扱い
スピリット能力は「ボムへい持ち込み」|全く笑えない公式ネタ
パスは『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』に「スピリット」としてゲスト出演しています。
しかし、その能力は「ボムへい持ち込み」という衝撃的なものでした。
これは、彼女が人間爆弾にされた悲劇的な最期を直接的に表現したものであり、原作を知るファンにとっては全く笑えない、ブラックジョークの効いた設定となっています。
スピリッツバトルも「ボムへい祭り」|殺意溢れる無茶振りな内容を解説
パスのスピリットを手に入れるためのバトルも、彼女の運命を反映した過酷なものです。
ステージには無数の「ボムへい」が降り注ぎ続ける「ボムへい祭り」というルールになっており、非常に難易度の高い戦いを強いられます。
対戦相手もパス本人を模した「むらびと」と、彼女が搭乗した「メタルギアZEKE」を思わせる巨大な「ロボット」であり、細部に至るまで原作への深いリスペクト(と悪意)が感じられる内容です。
まとめ:メタルギア パスの物語を深く知るために
- パスの偽名は「パス・オルテガ・アンドラーデ」で平和を意味する
- 本名は「パシフィカ・オーシャン」で三重スパイとして暗躍した
- GZでは凄惨な拷問を受け、体内に2つの爆弾を仕掛けられた
- 2つ目の爆弾は子宮に埋め込まれていたと強く示唆される
- スネークたちを救うため自らヘリから飛び降り爆死した
- TPPに登場するパスはヴェノム・スネークが見た幻である
- 幻覚の原因は救えなかった後悔と肉体的な幻肢痛にある
- 「パスの日記」ではMSFでの生活に安らぎを感じていた
- 「恋の抑止力」は実現しなかった「平和の日」のための歌である
- 『スマブラSP』では悲劇的な最期を反映しボムへいを持つ
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