フリーホラーゲームの金字塔として知られる「Ib(イヴ)」は、2012年の公開から10年以上が経過した今もなお、多くのプレイヤーの心を掴み続けています。
美術館という閉鎖空間で繰り広げられる物語は、全7種のマルチエンディングを採用しており、プレイヤーの行動次第で結末が大きく変化します。
各エンディングには一貫した世界観のルールが存在し、偶然や都合で分岐するものは一つもありません。
だからこそクリア後の後味は独特で、「あの結末にはどんな意味があったのか」「なぜあのキャラクターはあの行動を取ったのか」という疑問が自然と湧き上がります。
この記事では、Ibの全エンディングについて分岐条件から深い解釈まで徹底的に考察し、物語の核心に迫ります。
初見プレイを終えたばかりの方から、何周もプレイして考察を深めたい方まで、Ibの世界をより深く味わうための手がかりとなる内容をお届けします。
Ibとはどんなゲームか|エンディング考察の前提知識
Ibは、kouri氏が制作したRPGツクール2000製のホラー探索型アドベンチャーゲームです。
9歳の少女イヴが両親とともに訪れた美術館で、謎の芸術家ワイズ・ゲルテナの作品に導かれるようにして異世界へ迷い込むところから物語は始まります。
作中では戦闘やアクション要素が存在せず、謎解きを中心にゲームが進行していきます。
イヴの命は一輪の赤いバラとして具現化されており、花びらの枚数がヒットポイントの役割を果たすという独自のシステムが採用されています。
花びらがすべて散ってしまうとゲームオーバーになり、水の入った花瓶にバラを活けることで回復が可能です。
2012年にフリーウェアとして公開された後、2022年にSteamでリメイク版が発売されました。
さらに2023年にはNintendo Switch版、2024年にはPS5/PS4版がリリースされ、プラットフォームの拡大とともに新たなファン層を獲得し続けています。
リメイク版ではグラフィックの全面刷新や会話システムの追加が行われましたが、kouri氏は「物語の大きな改変やエンディングの追加は蛇足になる」として、ストーリーやエンディング数には手を加えていません。
つまり、フリーゲーム版(v1.07)とリメイク版でエンディングの種類や条件は基本的に同一であり、考察もそのまま適用できます。
Ibの全7エンディング一覧と分岐条件
Ibには全7種のエンディングが存在し、ゲーム内での行動によって到達先が変わります。
分岐を左右する主な要素は「ギャリーの死亡率」「ギャリーの好感度」「メアリーの好感度」の3つです。
以下の表に全エンディングの概要と到達条件をまとめます。
| ED番号 | エンディング名 | 分類 | 主な条件 |
|---|---|---|---|
| ED1 | 再会の約束 | トゥルーエンド | ギャリー生存+好感度8以上+ハンカチを渡す |
| ED2 | いつまでも一緒 | ノーマル(実質バッド) | ギャリー死亡+メアリーを燃やさず脱出 |
| ED3 | 片隅の記憶 | ノーマル(ハッピー寄り) | ギャリー生存+好感度7以下 |
| ED4 | 忘れられた肖像 | ノーマル(ギャリーにとってバッド) | ギャリー死亡+メアリーの絵を燃やして脱出 |
| ED5 | ひとりぼっちのイヴ | バッドエンド(4パターン) | 各ルートの最終選択で特定の行動を取る |
| ED6 | ようこそゲルテナの世界へ | バッドエンド | 特殊条件+メアリー好感度4 |
| ED7 | ある絵画の末路 | バッドエンド | 特殊条件+メアリー好感度3以下 |
スタッフロールとエンディング曲が流れるのはED1「再会の約束」のみです。
ED5には到達経緯の異なる4つのパターンが存在するため、実質的には10通り近くの結末が用意されていることになります。
ギャリーの生存ルートと死亡ルートの分岐の仕組み
エンディング分岐の根幹をなすのが、ギャリーの「生存ルート」と「死亡ルート」の振り分けです。
この判定はスケッチブックに入った時点で行われ、ギャリーの死亡率が2以下であれば生存ルート、3以上であれば死亡ルートへと進みます。
ギャリーの死亡率が上がる行動
死亡率は特定のイベントで増加していきます。
鏡の部屋でギャリーがマネキンを壊す場面、ヒモが5本並んだ部屋でギャリーが右端のヒモを引く場面、人形がついてくる通路でギャリーがドアの前の人形を蹴飛ばす場面では、それぞれ1ずつ上昇します。
また、橋を渡った先の通路でメアリーに「ギャリーと二人でここから出る」と答えた場合にも1増加しますが、この選択肢は死亡率が0の場合にしか出現しません。
「カサをなくした乙女」の部屋にあるマネキンを全て机から落とすと1上昇し、白の絵の具玉の部屋からの脱出に失敗すると一気に2上昇します。
つまり、ギャリーの命を守るためには、序盤から中盤にかけてギャリーの攻撃的な行動を止める選択を積極的に取る必要があるのです。
生存ルートでのED1とED3の違い
ギャリーが生存した場合、ギャリーの好感度によってED1「再会の約束」とED3「片隅の記憶」に分岐します。
好感度8以上であればメアリーの家でハンカチを渡すイベントが発生し、ED1への道が開かれます。
好感度を上げるには、ラビリンスでギャリーと一緒に張り紙を読む、悪夢から目覚めた部屋でコートを渡す、停電中にギャリーの呼びかけに返事をするなど、合計9箇所のイベントで適切な行動を取る必要があります。
好感度7以下、あるいはハンカチを渡す場面で別の選択肢を選んだ場合はED3に到達します。
ED1「再会の約束」の考察|トゥルーエンドが示す希望の意味
ED1「再会の約束」は、Ib唯一のトゥルーエンドであり、最も到達が難しいエンディングです。
ギャリーと共に脱出した後、現実世界の美術館でイヴとギャリーは再会を果たします。
ポイントは、ギャリーのポケットにイヴのハンカチが残っていることです。
ハンカチに刺繍された「Ib」の文字と付着した血を見た瞬間、ギャリーはゲルテナの世界での記憶を取り戻します。
ここで「覚えていない」を選択した場合でも、ポケットから見つかるレモン味のキャンディがきっかけとなり記憶が蘇るという二段構えの演出が用意されています。
このエンディングの考察で注目すべきは、「なぜハンカチだけが記憶の鍵になりえたのか」という点です。
ゲルテナの世界から脱出すると通常は記憶を失うというルールがあるなかで、ハンカチという現実世界の物品がゲルテナの世界での出来事と結びつくことで、記憶の喪失を打ち破る力を持ったと解釈されています。
物語全体を通してイヴの持ち物として強調されるハンカチが、最終的に二人の絆を証明するアイテムとなる構成は、多くのプレイヤーに深い余韻を残しています。
ED2「いつまでも一緒」の考察|メアリーが現実に出られた理由
ED2「いつまでも一緒」は、メアリーがイヴの家族として現実世界に出てくるエンディングです。
一見するとハッピーエンドのように映りますが、ギャリーの犠牲の上に成り立つ結末であり、実質的にはバッドエンドに分類されます。
このエンディングを理解するうえで欠かせないのが、美術館に存在する「存在の交換」というルールです。
作中の書物には「存在を交換することにより、空想が現実に成り得る」と記されており、メアリーのような絵画の存在が外の世界に出るためには、代わりに現実世界の誰かが美術品として取り込まれなければなりません。
ED2では、ギャリーの薔薇がメアリーによって散らされ、ギャリーは美術品と化しています。
つまりギャリーとメアリーの間で「存在の交換」が正式に成立しており、メアリーは何の問題もなく現実世界への脱出を果たせたわけです。
注目すべき細部として、帰りの車の中でイヴのポケットにはギャリーの遺品であるキャンディまたはライターが残っていますが、ライターを持っている場合はメアリーに捨てられ、キャンディの場合はメアリーに食べられてしまいます。
ギャリーの痕跡が一つずつ消されていく描写は、メアリーがギャリーの存在を完全に上書きしようとしている恐ろしさを暗示しており、後味の悪さが際立つ演出です。
ED3「片隅の記憶」の考察|記憶を失った二人のすれ違い
ED3「片隅の記憶」は、ギャリーと共に脱出に成功しながらも、互いの記憶を失ったまま別れてしまうエンディングです。
美術館内で薔薇の像を鑑賞するギャリーと偶然再会しますが、二人ともゲルテナの世界での出来事を覚えておらず、数言だけ交わして別れます。
ED1「再会の約束」と対比すると、このエンディングの切なさがより鮮明になります。
ED1との違いは、ハンカチを渡していないことに起因します。
記憶を繋ぎとめる物理的な証拠がないために、二人は同じ空間にいながら互いを思い出せません。
考察上の解釈としては、ゲルテナの世界から脱出した者は「すべてを失う」という設定が忠実に適用された結果です。
ハンカチというたった一つのアイテムの有無が、希望と喪失を分ける分水嶺となっている点に、このゲームの構成の巧みさが表れています。
多くのプレイヤーが最初のプレイで到達しやすいエンディングでもあり、ここからED1の条件を探っていく過程そのものがIbの醍醐味だと広く認識されています。
ED4「忘れられた肖像」の考察|ギャリーが絵画になる恐怖
ED4「忘れられた肖像」は、ギャリーの薔薇が散りメアリーの絵を燃やした後、イヴが一人で脱出するエンディングです。
現実世界に戻ったイヴは、ゲルテナの世界での記憶を何一つ覚えていません。
しかし美術館の中で、かつて「吊るされた男」が掛かっていた場所に、ギャリーによく似た男性を描いた「忘れられた肖像」という絵画が出現しています。
イヴはその絵の前で一瞬立ち止まりますが、結局思い出すことはなく、迎えに来た母親と共に去っていきます。
このエンディングの考察で頻繁に議論されるのが、「吊るされた男」と「忘れられた肖像」の入れ替わりが持つ意味です。
ゲーム冒頭でギャリーが異常に近い距離で見つめていた「吊るされた男」は、タロットカードでは「自己犠牲」や「試練」を象徴します。
ギャリーがゲルテナの世界に取り込まれ絵画と化した結果、「吊るされた男」の場所にギャリーの肖像が掛かるという展開は、「存在の交換」ルールが現実世界にも反映されたことを示唆しています。
なお、ED2「いつまでも一緒」ではギャリーの肖像が出現しないという違いも見逃せません。
ED2ではギャリーの存在がメアリーの脱出に使われたため、美術館にギャリーの作品が残る必要がなくなったと解釈できます。
ED5「ひとりぼっちのイヴ」の考察|4パターンが示す孤独
ED5「ひとりぼっちのイヴ」は、イヴだけがゲルテナの世界に取り残されるバッドエンドです。
一つのエンディングとして括られていますが、到達する経緯によって4つのパターンが存在します。
1つ目はギャリー生存ルートの最終選択でギャリーの手を取らないパターン、2つ目はギャリー死亡後に「怖いから離れる」を選ぶパターン、3つ目はギャリー死亡かつメアリー焼失の状態で「飛び込んでみる」の後に「ついていく」を選ぶパターンです。
4つ目は追加ダンジョンの「最後の舞台」で「寝てみる」を選択し、イベントを最後まで見るパターンとなっています。
4つのパターンに共通するのは、イヴが自らの意志で異世界に留まる選択をしてしまう、あるいは帰還の機会を逃してしまうという点です。
特に「最後の舞台」で寝るパターンは、黒いベッド型の作品がイヴをゲルテナの世界に永続的に取り込むための装置ではないかという考察と結びつき、ゲルテナの意志による誘導が強く感じられる結末となっています。
ED6「ようこそゲルテナの世界へ」の考察|メアリーの選択
ED6「ようこそゲルテナの世界へ」は、心壊を起こしたイヴとギャリーをメアリーが見捨てられず、三人でゲルテナの世界に留まるエンディングです。
到達には非常に複雑な条件を満たす必要があり、全エンディングの中でも特に難易度が高いとされています。
条件には「黄の間のかくれんぼで不吉な絵を見る」「鏡の部屋でマネキンを蹴飛ばした後に張り紙を剥がす」「ギャリーの死亡率を特定条件で2以上にする」「白の絵の具玉の部屋からの脱出に失敗する」のすべてを同時に満たす必要があります。
さらにメアリーの好感度が4であることがED6への分岐条件です。
このエンディングで重要なのは、イヴとギャリーの薔薇が散っていないという事実です。
赤い服の女と青い服の女がそれぞれ散っていないバラを持っている描写から、二人は心壊状態であっても「生きている」ことが確認できます。
つまりメアリーにとって「存在の交換」の相手が存在しない状況であり、仮にメアリーが一人で脱出を試みても、ED7「ある絵画の末路」と同じ悲劇が待ち受けていたはずです。
メアリーが外の世界という長年の夢を諦めてまで二人のもとに戻った行動は、友情を選んだ結果として評価される一方で、三人とも狂気の世界から抜け出せないという救いのない結末でもあります。
ED7「ある絵画の末路」の考察|存在の交換ルールが示す必然
ED7「ある絵画の末路」は、メアリーがイヴとギャリーを見捨てて単独での脱出を試みるものの、誰もいない暗闇の美術館に閉じ込められるエンディングです。
メアリーの好感度が3以下の場合にED6の代わりにこちらへ分岐します。
多くのプレイヤーに衝撃を与えたこのエンディングですが、作者の悪趣味や気まぐれで作られたわけではありません。
美術館の絶対的なルールである「存在の交換」を破った場合に何が起こるのかを明示するために、必然的に設計されたバッドエンドです。
前述の通り、ED6でもED7でもイヴとギャリーの薔薇は散っておらず、二人は美術品になっていません。
交換対象がいない状態で「絵空事の世界」から外に出ようとしたメアリーは、現実世界に到達できず、現実でもゲルテナの世界でもない暗闇に閉じ込められてしまいます。
脱出直前にゲルテナが壁に「そっちはだめだよ」と警告する描写は、ゲルテナ自身がこの結末を予期していたことを示唆しています。
ゲルテナは美術館の支配者でありながら、存在の交換というルールに対しては無力であり、自分の最後の作品であるメアリーを助けることすらできなかったのです。
なお、メアリーを操作中にゲルテナ作品集のメアリーのページを確認するとインクが滲んで読めない仕様になっていますが、同時に「ある少女の末路」という本も読めなくなっています。
この本のタイトルがエンディング名「ある絵画の末路」と対応している点は、物語の隅々まで伏線が張り巡らされていることの証左です。
「偽ギャリー」と「偽母親」の正体に関する考察
Ibのエンディングで最も議論を呼ぶ謎の一つが、終盤でイヴを引き止めに現れる存在の正体です。
メアリーの絵を燃やした後に登場するため、メアリーが変装している可能性は否定されます。
エンディングごとに「引き止め」の有無を比較すると、興味深い法則が浮かび上がってきます。
ギャリー生存かつメアリー死亡のルートでは、母親の姿をした何かがイヴを引き止めに来ます。
ギャリー死亡かつメアリー死亡のED4では、ギャリーの姿をした存在が現れます。
一方でギャリー死亡かつメアリー生存のED2では、誰もイヴを引き止めに来ません。
この違いから導かれる有力な考察が「ゲルテナの意志」説です。
メアリーが生きてイヴと共に脱出するED2では、ゲルテナは愛するメアリーの幸福を優先してイヴの脱出を見逃したと解釈できます。
一方、メアリーが死亡しているルートでは、ゲルテナは貪欲にイヴを引き止めようとします。
「偽ギャリーは美術品化した本物のギャリーが脱出を図っている」とする別の解釈も存在しますが、ED2で偽ギャリーが出現しない点との一貫性を重視すると、すべてゲルテナの幻影と捉える方が矛盾なく説明できるとされています。
ゲルテナの意志とイヴへの執着の考察
Ibの物語において、ゲルテナは直接姿を見せることのない「隠れた登場人物」です。
しかし美術館全体を操り、絵画や彫刻を通じてイヴたちに干渉し続けるゲルテナの存在は、すべてのエンディングの背後に影を落としています。
なぜゲルテナはイヴに執着するのか
この点については複数の考察が展開されています。
一つ目は、ゲルテナとイヴの母親に深い面識があったとする説です。
作中で「悪意なきの地獄」の前でイヴの母親がゲルテナの作品に強い関心を示す一方、父親は無関心である描写があり、母親とゲルテナの間に特別な繋がりがあった可能性が指摘されています。
二つ目は、イヴがゲルテナの愛人の子孫にあたるという説です。
「赤い服の女」のモデルとなったゲルテナの愛人とイヴの容姿に共通点が見られることが根拠とされています。
三つ目は、イヴの母親がゲルテナの娘であり、イヴは孫にあたるという説です。
いずれの説も公式には明言されておらず、推測の域を出ません。
ただし、ゲルテナがイヴを世界に取り込もうとする動機に何らかの個人的感情が含まれていることは、エンディング間の引き止め行動の差異から強く示唆されています。
メアリーに対するゲルテナの感情
ゲルテナがメアリーに対して特別な愛情を持っていることも、エンディングの比較から読み取れます。
ED2でイヴの脱出を黙認した点、ED7でメアリーに「そっちはだめだよ」と警告した点は、ゲルテナにとってメアリーが単なる作品ではなく、我が子のような存在であったことを物語っています。
ただしED7の最後には「おいでよメアリー」「バイバイメアリー」という突き放すような言葉も表示されるため、ゲルテナの感情は一筋縄では解釈できない複雑さを持っています。
「存在の交換」ルールから読み解くエンディングの構造
Ibの全エンディングを矛盾なく理解するための鍵は、「存在を交換することにより、空想が現実に成り得る」という美術館のルールにあります。
このルールは作中の書物に記されており、すべてのエンディングに一貫して適用されています。
ルールが正常に機能した場合
ED2「いつまでも一緒」がこれに該当します。
ギャリーの薔薇が散り美術品化したことで、ギャリーとメアリーの間に正式な存在の交換が成立し、メアリーは問題なく現実世界に到達できました。
ルールが破られた場合
ED7「ある絵画の末路」がこの典型例です。
イヴもギャリーも薔薇が散っておらず美術品化していないため、交換対象が存在しません。
交換なしに絵画の存在が外へ出ようとした結果、メアリーは現実世界にもゲルテナの世界にも属さない暗闇に閉じ込められました。
3人全員での脱出が不可能な理由
このルールの存在により、イヴ・ギャリー・メアリーの3人全員が脱出するエンディングは原理的に成立しません。
メアリーが外に出るためには必ず誰かの薔薇が散る必要があり、3人全員が無事に現実へ帰還する道は存在しないのです。
ED7はこの事実をプレイヤーに突きつけるために設計されたエンディングであり、「3人脱出エンド」の不在に対する作者からの明確なメッセージだと広く認識されています。
バラの花言葉に込められた物語の暗示
Ibにおいてバラは単なるHP表示ではなく、各キャラクターの本質を象徴するモチーフとして機能しています。
イヴの赤いバラの花言葉は「愛情」です。
家族への愛、ギャリーとの絆、メアリーへの思いやりなど、イヴの行動原理を端的に表しています。
ギャリーの青いバラの花言葉は「不可能」そして「奇跡」です。
青い薔薇は自然界には存在せず、品種改良によってようやく誕生したことから「不可能」という花言葉が付けられましたが、開発成功後に「奇跡」が追加されました。
ゲルテナの世界という異常な空間に巻き込まれたギャリーが、イヴと共に脱出を果たすことは「不可能に近い奇跡」であり、この花言葉とED1の結末は見事に呼応しています。
メアリーの黄色いバラの花言葉は「嫉妬」「薄れゆく愛情」、そして「友情」です。
外の世界への憧れ、イヴへの独占欲、ギャリーへの敵意という複雑な感情が「嫉妬」と「薄れゆく愛情」に集約される一方で、ED6ではイヴとギャリーを見捨てられなかったメアリーの「友情」の側面が描かれています。
さらに重要なのは、メアリーのバラが造花であるという事実です。
本物の花ではないということは、メアリーが生命を持たない絵画の存在であることの決定的な証拠であり、花瓶での回復やセーブが不可能である理由もここに帰結します。
「吊るされた男」とギャリーの関係性の考察
ゲーム冒頭の美術館で、ギャリーは「吊るされた男」という絵画を他の来場者よりも異常に近い距離で見つめています。
この描写は単なる演出ではなく、物語全体を貫く伏線として多くの考察を生んできました。
タロットカードにおける「吊るされた男」は「自己犠牲」「試練」「忍耐」を象徴するカードです。
ギャリーがゲルテナの世界でイヴのために自らを犠牲にする展開は、この象徴と完全に一致しています。
一般的に広く知られている考察として「ギャリーには自殺願望があったのではないか」という説があります。
根拠としては、「吊るされた男」への異常な関心、青い人形の部屋で「うまくいかない」という発言、青いバラの「不可能」という花言葉などが挙げられています。
一方で反論も存在します。
ギャリーは「美術館に来るのを楽しみにしていた」と発言しており、イヴに薔薇を取り返してもらった際にほっとする描写もあります。
自殺願望というよりも、心のどこかに孤独や不安を抱えていた人物だったという穏やかな解釈も支持されています。
ED4でギャリーの肖像が「吊るされた男」の場所に掛け替えられる演出は、いずれの説を取るにしても強い因果関係を感じさせるものであり、この伏線回収がIb全体の考察の奥深さを象徴しています。
隠しダンジョンと真ゲルテナ展から見える裏設定
本編をクリアした後に解放される隠しダンジョンと真ゲルテナ展には、本編では語られなかった設定やゲルテナの秘密に関するヒントが散りばめられています。
隠しダンジョンの構造
2周目以降に出現する追加エリアでは、ギャリーを操作して探索を行います。
ここで登場する「失敗作」は、額縁を突き破って実体化する人型の敵であり、メアリーを彷彿とさせる要素を持ちながらも関係性は明確にされていません。
「最後の舞台」と呼ばれる黒いベッド型の作品は、調べて「寝てみる」を選択するとED5の特殊パターンに到達します。
この作品が真ゲルテナ展でギャリーやメアリーと同じエリアに展示されている点から、イヴを作品として美術館に留めるためにゲルテナが用意した装置ではないかと考察されています。
真ゲルテナ展の仕組み
真ゲルテナ展は、イヴが本編中に確認した作品とBGMが展示されるギャラリーモードです。
各エンディングを迎えるごとにキャラクターが追加されていく仕様になっており、ED1クリアでギャリー、ED2クリアでメアリー、ED3クリアで母親、ED4クリアで父親がそれぞれ出現します。
全150点のゲルテナ作品を収集するやり込み要素も存在し、繰り返しプレイすることで新たな発見が得られる構造は、考察を深めたいプレイヤーにとって大きな動機付けとなっています。
フリーゲーム版とリメイク版の違い|考察への影響
Ibの考察においてフリーゲーム版とリメイク版のどちらを基準にするかは重要なポイントです。
変更された主な要素
リメイク版ではグラフィックが全面的に描き直され、解像度が大幅に向上しています。
会話システムの追加により、キャラクター間の掛け合いが増え、性格や関係性がより明確に描かれるようになりました。
ギャリーの最大HPがフリーゲーム版の10枚からリメイク版の7枚に変更されたことで、難易度のバランスにも調整が入っています。
一部のギミックや謎解きも変更されていますが、美術品が関わる仕掛けは維持されています。
変更されなかった要素
最も重要な点として、エンディングの数や分岐条件の基本構造には手が加えられていません。
kouri氏は公式にリメイク版で新エンディングを追加しない方針を明言しており、物語の根幹に関わる設定は一切変わっていません。
したがって、フリーゲーム版(v1.07)で蓄積されてきた考察はリメイク版にもそのまま適用可能です。
ただし会話イベントの追加によって新たな考察材料が増えている点には注意が必要で、リメイク版独自の会話から得られる情報も考察に組み込む価値があります。
Ibのエンディング考察でよくある誤解と注意点
長い歴史を持つIbの考察には、いくつかの広まりやすい誤解が存在します。
リメイク版で新エンディングが追加されたという誤解
リメイク版にエンディングの追加はありません。
フリーゲーム版のv1.04で追加されたED6「ようこそゲルテナの世界へ」とED7「ある絵画の末路」をリメイク版の新要素と混同するケースが散見されますが、リメイク版はv1.07準拠の7種をそのまま引き継いでいます。
非公式ED「犠牲(Sacrifice)」を正史として扱う誤り
海外ファンが無許可で制作した改造版「Ib: Green Edition」に収録されていた8つ目のエンディングですが、kouri氏の警告と配布停止要請を受けて現在は配布されていません。
イヴが自らバラを散らしてギャリーとメアリーを現実に送り出すという内容は感動的ですが、公式の設定とは一切関係がなく、考察の根拠として用いるべきではありません。
花びらの枚数がHPと完全に一致するという思い込み
ギャリーの薔薇が散る場面で花弁を数えると13枚以上確認できるため、花びらの枚数とHP数は必ずしも一致しないと考えられています。
ゲームシステムとしてのHPと、ビジュアル上の花びら描写は別物として捉える方が自然です。
考察をすべて公式見解と受け取る危険性
kouri氏はストーリーの詳細な解説をほとんど行っておらず、すべての考察はプレイヤーの解釈に委ねられています。
Ib@ウィキをはじめとする考察サイトでも「あくまで解釈の一つ」と注記されており、どれだけ精緻な考察であっても推測であることを忘れてはなりません。
まとめ:Ibのエンディング考察で物語の真意を読み解く
- Ibには全7種のエンディングが存在し、ギャリーの死亡率・好感度・メアリーの好感度で分岐する
- トゥルーエンドED1「再会の約束」は最も到達が難しく、ハンカチが記憶を繋ぎ止める鍵となる
- 美術館の「存在の交換」ルールがすべてのエンディングに矛盾なく適用されている
- ED7「ある絵画の末路」はルール違反の結末を示し、3人脱出エンドが原理的に不可能であることを証明する
- 終盤に現れる「偽ギャリー」「偽母親」はゲルテナの意志による幻影であるとする考察が有力である
- ED2でのみ引き止めが発生しないのは、ゲルテナがメアリーの幸福を優先した結果と解釈される
- 各キャラクターのバラの花言葉(赤=愛情、青=不可能と奇跡、黄=嫉妬と友情)が物語のテーマと呼応している
- リメイク版ではエンディング数やストーリーの改変はなく、フリーゲーム版の考察がそのまま有効である
- 非公式ED「犠牲」は正史ではないため、考察の根拠にすべきではない
- kouri氏は公式解説を行っておらず、すべての考察はあくまで「解釈の一つ」として楽しむものである

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