オープンワールドRPG『原神』に登場する知恵の国「スメール」は、その広大な熱帯雨林と砂漠地帯で多くの旅人を魅了しています。
この国を探索していると、実在する特定の国や地域を彷彿とさせる名称や風景に気づくことも多いでしょう。
スメールのモチーフを理解することは、ゲーム内の物語やキャラクターの背景をより深く楽しむ鍵となります。
この記事では、言語学的な由来から歴史的な背景まで、スメールのモデルとなった国々を詳しく紐解いていきます。
スメールのモチーフ国はどこ?結論は「インド」と「古代オリエント」の統合
スメールの主要なモチーフは、インドを中心としつつ、古代エジプトやペルシアを含む「古代オリエント」を統合したものです。
単一の国をモデルにするのではなく、人類の古代文明が勃興した複数の地域を融合させることで、知恵の国にふさわしい重厚な世界観が構築されています。
熱帯雨林と砂漠という対照的な環境も、この広域な文化圏の象徴と言えるでしょう。
単一の国ではない?公式情報と複数の文化圏が混ざり合う理由
スメールのモチーフが複数の文化圏にまたがっている理由は、開発チームが特定の国に縛られず、広域な歴史や風土をデザインに取り入れているためです。
公式のプレビュー動画や開発者コメントからも、南アジアから中東、北アフリカに至るまでの幅広い影響が確認できます。
これにより、一言で「〇〇国がモデル」とは言い切れない、多層的な文化体験がプレイヤーに提供されています。
さまざまな文明が交差するシルクロードのような深みが、スメールという国の大きな特徴です。
熱帯雨林と砂漠が共存する地理的環境はどこがモデル?
スメール特有の「雨林と砂漠の二分」という地理的環境は、主にインドの地勢と合致しています。
インド北西部には広大なタール砂漠が広がり、一方で南部や東部には湿潤な熱帯雨林が存在しており、ゲーム内の構成と非常に似ています。
また、砂漠側の遺跡群にはエジプトの景観が、緑豊かな森林側には東南アジアや南アジアの湿地帯の要素がそれぞれ取り入れられています。
この極端な環境の変化が、スメールの物語における「生命の死と再生」というテーマを強調しています。
スメール(須弥)の名称の由来はシュメール文明ではなく「インドの聖山」
「スメール」という名称の直接的な語源は、古代メソポタミアのシュメール文明ではなく、インド神話に登場する「スメール山(須弥山)」です。
英語表記の「Sumeru」や中国語表記の「须弥(須弥)」は、仏教やヒンドゥー教において世界の中心にそびえるとされる聖なる山を指しています。
シュメールは綴りが「Sumer」であり、語尾の「u」が欠けているため、言語学的な関連性は低いと考えられます。
世界の中心とされる山の名を冠することで、知恵の殿堂としての象徴性が高められています。
言語から見るモチーフ:スメールの用語や神の名に隠された意味
スメールで使用される用語や神々の名称には、サンスクリット語やパーリ語が多用されています。
これらは古代インドの学術や宗教において公用語として機能していた言葉であり、知恵を理念とする国の言語的土台となっています。
言葉の意味を紐解くことで、キャラクターや組織の役割がより鮮明に見えてくるはずです。
草神「クラクサナリデビ」と「マハールッカデヴァタ」のサンスクリット語的な由来
現草神の「クラクサナリデビ」と先代草神の「マハールッカデヴァタ」には、対照的な意味が込められています。
サンスクリット語やパーリ語で「クラ(Cula)」は「小さい」、「マハー(Maha)」は「大きい」を意味しており、新旧の神の規模感を示唆しています。
また、「ルッカデヴァタ」は「樹木の女神」、「クサナリ」は仏教説話『ジャータカ物語』に登場する吉祥草を指しています。
これらの命名規則は、スメールの神性がインドの植物信仰や仏教思想と深く結びついていることを証明しています。
アーカーシャやプラーナ(Purana)などインド哲学・聖典に関連する用語集
スメールのシステムや物語の核心を担う用語の多くも、インドの概念から引用されています。
例えば、情報共有システムの「アーカーシャ」はサンスクリット語で「虚空」や「空間」を意味し、万物を構成する要素の一つです。
メインストーリーのタイトルにも含まれる「プラーナ(Purana)」は、ヒンドゥー教の聖典の総称であり、「古き物語」を意味します。
これらの言葉は、単なる響きの良さだけでなく、その概念自体がゲーム内の設定とリンクするように選ばれています。
スパンタマッドやアムリタなど「ゾロアスター教」から引用された六大学派の名称
スメール教令院を構成する六大学派の名称は、古代ペルシアのゾロアスター教に由来しています。
「スパンタマッド」や「アムリタ」などは、最高神アフラ・マズダーに従う七人の善神(アムシャ・スプンタ)の名から取られています。
インドの言葉だけでなく、ペルシアの神話的要素を混ぜることで、スメールという国の文化的な広がりが表現されています。
スメールのキャラクターたちのモチーフと名前の語源一覧
スメールのキャラクターたちの名前やデザインには、実在の歴史的人物や神話のモチーフが色濃く反映されています。
開発チームは、各キャラクターの専門分野や性格に合わせて、特定の文化背景を巧みに割り振っています。
ここでは、代表的なキャラクターたちの由来を詳しく見ていきましょう。
ティナリ(ティグナリ)やアルハイゼンのモデルとなった実在の学者は?
レンジャー長のティナリと書記官のアルハイゼンは、イスラム黄金時代の偉大な学者がモデルであると考えられます。
ティナリのモデルは、11世紀のアラブ人植物学者「アル・ティグナリ」であり、彼の植物への造詣がキャラクター性に反映されています。
アルハイゼンのモデルは、「光学の父」として知られる物理学者・数学者の「イブン・アル=ハイサム」です。
物理学や哲学に精通したハイサムのイメージは、合理的で知的なアルハイゼンの性格と見事に合致しています。
ニィロウの名前の由来とペルシア語における「睡蓮」の意味
ズバイルシアターの看板踊り子であるニィロウの名前は、ペルシア語の「Nilufar(ニルーファル)」が語源です。
この言葉は「睡蓮」や「ハス」を意味しており、彼女の衣装やステージの装飾に蓮の花の模様が多用されていることからも裏付けられます。
蓮の花はインドの国花でもあり、スメールの森林地帯における清らかさや美の象徴として描かれています。
彼女の踊りは、特定の国の民族舞踊をベースにしつつ、水の元素にふさわしい優雅さを備えています。
セノのデザインとエジプト神話「アヌビス神」の共通点
大マハマトラであるセノのモチーフは、古代エジプト神話の冥界の神「アヌビス」で間違いありません。
ジャッカル(犬)を模した被り物や、審判を下すという役割は、死者の魂を量るアヌビス神の職能を強く連想させます。
また、彼の称号である「マハマトラ」は、古代インドのマウリヤ朝においてアショーカ王が設置した「道徳の将校」を指す言葉です。
エジプトの外見的モチーフとインドの官職名が融合している点は、スメールらしいデザインと言えます。
放浪者(スカラマシュ)がスメールに所属する背景と物語の役割
稲妻出身である放浪者がスメールに深く関わるようになったのは、彼が「神の心」を用いて偽の神になろうとした事件がきっかけです。
最終的に彼はナヒーダの庇護下に入り、スメールの歴史の裏側を支える「観測者」のような立場となりました。
彼の物語は、過去の因縁を断ち切り、新たな名前と身分を得るという「再生」のプロセスを描いています。
これまでの七国にはなかった「外来の存在がその地に根付く」というドラマが、スメールの懐の深さを物語っています。
スメール教令院のモデルは?イスラム黄金時代の歴史的背景
スメールの知の中枢である「教令院」のモデルは、中世イスラム世界における学術機関です。
特に8世紀から13世紀にかけての「イスラム黄金時代」に見られた、知識に対する飽くなき探求心がスメールの理念と重なります。
多種多様な学問が融合し、世界中から学徒が集まる教令院の姿は、歴史上のバグダードを彷彿とさせます。
バグダードに実在した学術施設「知恵の館」と教令院の共通点
教令院の直接的なモチーフの一つとして挙げられるのが、アッバース朝の首都バグダードに設立された「知恵の館(バイト・アル=ヒクマ)」です。
知恵の館は、ギリシア語やサンスクリット語の文献をアラビア語に翻訳し、天文学、数学、医学などの研究を行う総合学術施設でした。
スメールの「知恵を共同資源とする」という考え方は、この知恵の館で実践されていた組織的な知識収集と非常によく似ています。
世界文明を紡ぎ出した一大文化センターとしての歴史が、スメールの設定に説得力を与えています。
アッバース朝の文化融合がスメールの「知恵」の理念に与えた影響
アッバース朝時代は、アラブ、ペルシア、インド、ギリシアなどの諸文明が融合した時代でした。
この「異なる文化の融合による学問の発展」こそが、スメールの多文化的なデザインの根底にあります。
特定の民族の特権を否定し、すべてのムスリムに平等な権利を認めたアッバース朝の開放性は、教令院がテイワット全土から学生を受け入れている設定に反映されています。
知恵を何よりも尊ぶ姿勢は、この時代の「学者のインクは殉教者の血よりも尊い」という教訓に基づいています。
建築様式に見られるイスラム建築の意庁「イーワーン」の特徴
スメールシティの建築には、イスラム建築の象徴的な要素である「イーワーン」が多く見られます。
イーワーンとは、三方を壁に囲まれ、一方が完全に開いたアーチ状の空間のことで、ペルシア建築からイスラム世界全体に広がりました。
スメールの建物で見られるスペード型のような独特なアーチ構造は、まさにこのイーワーンのデザインを模したものです。
こうした細かな建築意匠の積み重ねが、スメールという国の「オリエントな雰囲気」を視覚的に決定づけています。
砂漠エリア「大赤砂海」のモチーフはエジプトと古代メソポタミア
緑豊かな森林エリアとは対照的に、西側に広がる「大赤砂海」は、古代エジプトやメソポタミアが主なモチーフです。
果てしなく続く砂丘の中にそびえる巨大な建造物は、数千年前の高度な文明の記憶を現代に伝えています。
砂漠の民の信仰や風習も、雨林側とは全く異なる独自の文化として描かれています。
キングデシェレトの霊廟とピラミッド:古代エジプト文明のオマージュ
砂漠エリアで最も目立つ「キングデシェレトの霊廟」は、言わずもがな古代エジプトのピラミッドがモデルです。
その巨大な四角錐の形状や、内部に張り巡らされた複雑な通路、そして死者のための空間という設定は、クフ王のピラミッドなどを強く意識しています。
キングデシェレト(スカーレットキング)という王の存在自体も、太陽神ラーやファラオの権威を象徴しています。
このエリアの探索は、まさにエジプト考古学を追体験するようなミステリアスな体験を提供してくれます。
アブ・シンベル神殿を彷彿とさせる砂漠の巨大遺跡と神々の意匠
砂漠の各所に見られる石像や神殿の入り口は、アブ・シンベル神殿のような巨像を伴うエジプトの遺跡をモデルにしています。
犬(アヌビス)や鳥(ホルス)の頭部を持つ巨大な石像が並び、不遜なまでの威圧感を与えています。
これらの意匠は、かつての砂漠文明がいかに強大であり、神に近い存在であったかを視覚的に伝えています。
また、地下に広がる迷宮のような構造は、失われた古代技術の高度さを象徴するギミックとして機能しています。
砂漠の民「エルマイト旅団」と中東の傭兵文化の関係性
砂漠で活動する「エルマイト旅団」は、中東の歴史に見られる傭兵集団や遊牧民の文化が投影されています。
彼らは特定の国に縛られず、実力と契約に基づいてテイワット各地で活動しており、その組織力は一国の軍隊にも匹敵します。
エルマイト旅団という名称は、古代メソポタミアに実在した「エラム(Elam)」に関連しているという説もあります。
彼らが抱く「砂漠の神」への強い信仰と教令院への反発は、歴史上の定住民と遊牧民の対立構造を反映したリアルな物語を生んでいます。
他の七国や新地域「ナド・クライ」とのモチーフの違いと比較
スメールを理解するためには、他の国々との文化的差異を比較することも有効です。
原神の世界は、現実の地域を再構築した七つの国で構成されており、それぞれが明確な個性を放っています。
ここでは、既存の国々や今後実装される地域との違いを整理します。
モンド(ドイツ)・璃月(中国)・稲妻(日本)との文化圏の対比
最初の三カ国は、それぞれヨーロッパ、中国、日本の文化が比較的ストレートに反映されています。
モンドは中世ドイツの自由都市や騎士道、璃月は中国の山水画のような風景と契約の精神、稲妻は江戸時代の日本を思わせる鎖国と武士の文化が特徴です。
これらに対し、スメールは「知恵」という抽象的な理念を、インドや中東という広大で複雑な文化圏を融合させることで表現しています。
前の三カ国よりも「多国籍感」が強く、よりファンタジーとしての再構成が深まっているのがスメールの特徴です。
次なる国「ナタ」のモチーフは南米・アステカ文明?スメールとの境界
スメールの西側に隣接する「ナタ」は、南米や中米、アステカ文明などのモチーフが取り入れられています。
戦争の国として描かれるナタは、火山や恐竜、そして部族ごとの強い結束を特徴としており、知恵のスメールとは対照的な「力」の文化です。
スメールの砂漠地帯が古代の知識を守る「墓標」であるのに対し、ナタは今まさに燃え盛る「闘争」の地です。
これら二つの国は「熱い乾燥地帯」という共通点を持ちながら、精神的な核となるモチーフが大きく異なります。
スネージナヤの辺境「ナド・クライ」は北欧・ケルト文化がモデルか?
北方の雪国スネージナヤの南端に位置する地方「ナド・クライ」は、これまでの国々とはまた異なる雰囲気を持っています。
この地域は北欧神話やケルト文化、さらにはスラヴ系の辺境のイメージをベースにしていると考えられます。
知恵を重んじるスメールに対し、ナド・クライは無法地帯に近い自由と、月の神に由来する神秘的な力が渦巻く混沌とした場所です。
スメールが人類の築いた「学問」の極致であるなら、ナド・クライはより原初的で、神話に近い「運命」の転換点として描かれています。
スメールのモチーフに関するよくある質問(FAQ)
スメールのモチーフについて、多くのプレイヤーが抱く細かな疑問についてお答えします。
設定の細かい部分に目を向けると、開発チームのこだわりがより深く理解できるでしょう。
特に生活文化や芸術面に注目してみます。
スメールの人はなぜ夢を見ない設定なの?
スメールの大人が「夢を見ない」という設定は、アーカーシャシステムによる理性の統制を象徴しています。
劇中では、夢を見ることは「理性が足りない証拠」や「野蛮なこと」として誇りにさえ思われていますが、実際はアーカーシャが夢のエネルギーを収穫していたという事実がありました。
この設定は、知識や論理を至上主義とし、感情や想像力を軽視するようになった教令院の歪んだ知恵のあり方を批判的に描いています。
ナヒーダが「夢」の力を使って人々を導く姿は、真の知恵には理性だけでなく心も必要であることを示しています。
ゲーム内に登場する「カレー」はどこの国の料理がベース?
スメール料理の代表格であるカレーは、主にインド料理がベースになっています。
ゲーム内では「バターチキン」などが実装されており、材料として「香辛料」や「ハッラの実」が新規に追加されました。
ただし、スメールシティで人気のカレーは、現地で独自に進化した「スメール式」として描かれており、稲妻出身者がその違いに驚く描写もあります。
これは、現実のカレーがインドから世界に広がり、各国で独自のアレンジ(イギリス式や日本式)が加えられた歴史のオマージュと言えます。
スメールの音楽に使われているシタールやウードはどこの国の楽器?
スメールのBGMには、インドやアラブの伝統楽器が非常に効果的に使用されています。
「シタール」は北インド発祥の弦楽器で、独特のうなるような音色が森林の神秘的な雰囲気を作り出しています。
一方、オーケストラでも使用される「ウード」は、アラブ音楽の代表的な楽器で、砂漠エリアの哀愁漂う旋律を奏でます。
これらの楽器の使用は、音楽面でもスメールのモチーフがインドと中東の融合であることを明確に示しています。
まとめ:スメールは人類の「知恵」と「古代文明」へのオマージュが詰まった国
スメールという国は、現実世界の豊かな歴史と文化を織り交ぜて作られた、まさに知恵の結晶です。
最後に、スメールのモチーフに関する重要なポイントを振り返ります。
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スメールの主なモチーフはインドと古代エジプト、ペルシアの融合である
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名称の由来はシュメール文明ではなくインド神話の「スメール山(須弥山)」である
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熱帯雨林と砂漠が共存する環境はインドの地勢をモデルにしている
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「クラクサナリデビ」などの神名はサンスクリット語やパーリ語に由来する
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教令院のモデルはイスラム黄金時代の「知恵の館」などの学術機関である
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キャラクター名には「アル・ティグナリ」など実在の学者がモデルになった例がある
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砂漠の遺跡や石像のデザインは古代エジプトのピラミッドや神殿がモチーフである
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「アーカーシャ」などの用語はインド哲学の概念から引用されている
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音楽面ではインドのシタールやアラブのウードといった伝統楽器が使われている
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スメールは単一の国ではなく、人類の古代文明全体への敬意を込めた統合的なデザインである

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