完全版商法とは?アトラスやドラクエの事例と批判される理由を解説

新作ゲームが発売された数年後に、追加要素を盛り込んだ「完全版」が登場することにモヤモヤした経験はないでしょうか。

自分が定価で買ったゲームが、後からより充実した内容で再販される「完全版商法」は、長年にわたりゲーマーの間で議論の的となってきました。

特に近年では、大手メーカーの決算でもこの販売手法がユーザーの「買い控え」を招いている可能性について言及され、改めて注目が集まっています。

この記事では、完全版商法の正確な定義やリメイクとの違い、なぜこれほどまでに批判されるのかという理由を、具体的な炎上事例を交えて徹底的に解説します。

アトラスやドラクエ、テイルズといった人気シリーズの歴史を振り返りながら、今後のゲーム購入における賢い判断基準を身につけていきましょう。

目次

完全版商法とは?意味や定義、リメイクとの違いを徹底解説

完全版商法の意味と定義「完成品に追加要素を加えて再販する手法」

完全版商法とは、一度「完成品」として発売されたゲームソフトに対し、後からストーリー、キャラクター、ダンジョンなどの追加要素を加え、別のパッケージ(またはフルプライスに近い価格)として改めて販売する手法のことです。

一般的に、オリジナルの発売から1年〜3年程度の比較的短いスパンで行われることが多く、消費者は「最初からその内容で出してほしかった」という感情を抱きやすくなります。

当初は開発期間や容量の都合でカットされた要素を補完する意味合いもありましたが、ビジネスモデルとして定着するにつれて、最初から完全版を出すことを前提に開発しているのではないかと疑われるケースも増えてきました。

単なる「ベスト版(廉価版)」とは異なり、ゲーム内容そのものに手が加えられている点が最大の特徴であり、定義の核となります。

完全版・リメイク・リマスター・移植の違い一覧表

ゲームの再販形態にはさまざまな種類があり、混同されがちです。

それぞれの違いを明確にするため、以下の表に特徴をまとめました。

用語 定義と特徴 具体例のイメージ
完全版 オリジナル版をベースに、追加要素(シナリオ、キャラ等)を足して再販するもの。 『ペルソナ5』→『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』
リメイク グラフィックやシステムを一から作り直したもの。内容は同じでも別作品扱い。 『FF7』→『FF7 リメイク』
リマスター 過去作の画質や解像度を向上させ、現代のハードで遊べるようにしたもの。 『FF10 HD Remaster』
移植 他のハードウェアで遊べるようにプログラムを書き換えたもの。内容は基本同じ。 アーケード版→家庭用ゲーム機版

このように比較すると、完全版は「ベースは同じだが、コンテンツが増えている」という点で、他の形態と区別されます。

特にリメイクほどの大きな変化はないものの、オリジナル版を持っているユーザーにとっては「追加部分のためだけに買い直す必要があるのか」という判断が迫られる微妙な立ち位置にあるといえます。

DLC(ダウンロードコンテンツ)販売と完全版商法の決定的な違い

現代のゲームビジネスにおいて、完全版商法と対比されるのがDLC(ダウンロードコンテンツ)による拡張です。

DLCは、既存のゲームソフトに追加データを購入して適用することで、続きのシナリオや新キャラクターを楽しめる仕組みです。

完全版商法との決定的な違いは、「オリジナル版のソフト(およびセーブデータ)をそのまま活かせるかどうか」という点にあります。

DLCであれば、すでに持っているソフトに追加料金(数千円程度)を払うだけでアップデートが完了します。

一方で完全版商法は、基本的には新しいソフトをパッケージごと(あるいはフルゲームとして)買い直す必要があり、価格もフルプライスになる傾向があります。

ユーザーの負担額や、過去のプレイデータを無駄にしないという観点から、現在はDLC形式での拡張が好まれる傾向にあります。

なぜ完全版商法は「嫌い」「うざい」と批判されるのか?

発売日に買ったファンが損をする「人柱」扱いと価格の問題

完全版商法が批判される最大の理由は、発売日に定価でソフトを購入した熱心なファンほど損をする構造になっているからです。

シリーズを応援しようと早期に購入したユーザーは、後に「完全版」が出ると知った際、自分が購入したものが「未完成品」や「有料ベータテスト版」だったかのような不快感を覚えることがあります。

これをネットスラング等で「人柱(ひとばしら)」と表現されることもあり、早期購入者がバグ報告やバランス調整のテストプレイヤーとして扱われているという不満が噴出しやすいのです。

さらに、完全版がフルプライスで販売される場合、オリジナル版と合わせて二重の出費を強いられることになります。

追加要素を楽しむために、合計で1万5千円〜2万円近い金額を支払うことになるため、経済的な不公平感が批判の根底にあります。

セーブデータ引き継ぎ不可による「時間の浪費」とやり直しの苦痛

RPGなどのプレイ時間が長いジャンルにおいて、セーブデータの引き継ぎができないことは致命的なデメリットです。

完全版商法の多くは、システムに変更が加えられていることを理由に、オリジナル版のセーブデータをそのまま利用できない仕様になっています。

そのため、追加された新シナリオや新キャラクターに辿り着くために、すでに一度クリアした数十時間のストーリーを最初からやり直さなければなりません。

社会人などプレイ時間が限られているユーザーにとって、同じ作業を繰り返すことは苦痛であり、単なる時間の浪費と感じられます。

「追加要素だけ遊びたいのに、またレベル1から上げ直し」という徒労感が、完全版商法に対する嫌悪感を増幅させているのです。

新作の買い控えを招く?セガ決算でも指摘されたユーザー心理

度重なる完全版のリリースは、ユーザーの間に「どうせ後で完全版が出るから、発売日には買わない」という学習効果を生み出します。

これを「買い控え」と呼び、メーカーにとっては初動の売上が鈍る深刻な問題となります。

実際に、セガサミーホールディングスの決算質疑応答において、新作タイトルの販売が伸び悩む要因の一つとして、ユーザーが完全版の発売を懸念して買い控えている可能性が指摘されました。

メーカー側もこの問題を認識し始めているものの、一度定着した「完全版待ち」の姿勢を崩すのは容易ではありません。

結果として、本当に面白いゲームであっても発売直後の盛り上がりが欠け、シリーズ全体の寿命を縮めてしまうリスクを孕んでいます。

完全版商法の代名詞?「アトラス」作品が炎上しやすい理由

ペルソナシリーズ(P3F・P4G・P5R)に見る完全版の歴史

アトラスは『ペルソナ』や『真・女神転生』シリーズで高い評価を得ている一方で、完全版商法の代表格としても知られています。

『ペルソナ3』では追加要素を加えた『ペルソナ3 フェス』、『ペルソナ4』では『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』、『ペルソナ5』では『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』と、ナンバリングタイトルごとに完全版をリリースしてきました。

これらの作品は追加要素のボリュームが多く、ゲームとしての完成度は非常に高いものになります。

しかし、『ペルソナ3』の時点ではアペンド版(追加ディスク)による安価なアップグレード手段が用意されていましたが、後の作品ではフルプライスでの買い直しが基本となりました。

特に『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』では、オリジナル版からの引き継ぎができず、もう一度長大なシナリオを最初からプレイする必要があったため、既存ファンからの反発を招きました。

真・女神転生V Vengeance(メガテンVV)と「未完成品」疑惑への反論

2024年に発売された『真・女神転生V Vengeance』もまた、完全版商法の議論を呼びました。

オリジナル版である『真・女神転生V』はSwitchで発売されましたが、ストーリーの描写不足やシステムの不便さが指摘されており、一部では「未完成ではないか」という声も上がっていました。

それから約3年後に発売された『Vengeance』では、ストーリーの大幅な分岐やシステムの改善、多数の悪魔追加が行われ、まさにファンが求めていた「完成形」となっていました。

開発側としては、ユーザーからのフィードバックを受けて作り直したという意図がありますが、ユーザー側からすれば「最初からこれを出してほしかった」という不満は拭えません。

ただし、本作に関しては追加要素が新作一本分に匹敵するボリュームであったため、「別物として楽しめる」と評価する声もあり、賛否が分かれる結果となっています。

メタファーなど今後の新作でも完全版は出るのか?

アトラスの完全版商法が常態化しているため、新規IPである『メタファー:リファンタジオ』などの新作に対しても、ユーザーは警戒心を抱いています。

「メタファーもどうせ完全版が出るのだろう」という推測がSNS等で飛び交い、発売日の購入を見送るユーザーも少なくありません。

アトラス作品は開発期間が長く、クリエイターが納得いくまで作り込む姿勢が強いため、発売後にさらに要素を足したくなる傾向があると考えられます。

今後、DLCによる拡張にシフトするのか、あるいは従来の完全版商法を続けるのかは、メーカーとしての信頼回復における重要な分岐点となるでしょう。

現時点では方針が明確に示されていないため、ユーザーは過去のパターンから推測して行動せざるをえない状況が続いています。

批判が殺到した有名な完全版商法のゲーム作品事例

【ドラクエ11S】他機種版発売とボイス追加による「後出し」騒動

国民的RPGである『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』も、完全版商法に類する展開で物議を醸しました。

当初、PS4と3DSで発売されましたが、後にNintendo Switchでボイス追加や追加シナリオを収録した『ドラゴンクエストXI S』が発売されました。

問題となったのは、最初に高画質なPS4版を購入したユーザーに対し、後発のSwitch版が「完全版」として機能面でも演出面でも上回ってしまったことです。

さらにその後、この『S』がPS4やXbox、PCにも移植されることになりましたが、初期のPS4版購入者に対するアップグレードパス(安価でのアップデート権)は用意されませんでした。

「最高の体験をするためにハードごと揃えたのに、後からより良いものが他機種で出る」という展開は、熱心なファンの忠誠心を揺るがす出来事となりました。

【テイルズオブシリーズ】ハードまたぎと完全版商法の定着(ヴェスペリア等)

バンダイナムコの『テイルズ オブ』シリーズも、かつては「ハードまたぎ」による完全版商法で批判を浴びました。

特に有名なのが『テイルズ オブ ヴェスペリア』の事例です。

Xbox 360で先行発売され、高い評価を得ていましたが、その約1年後にPS3で新キャラクターやメインシナリオのフルボイス化を追加した移植版が発売されました。

Xbox 360版を購入したユーザーにとっては、短期間で「不完全版」扱いされたような形となり、ハードウェアの牽引役として期待して購入した層からの反発は非常に大きなものでした。

この流れは他のタイトルでも見られ、「テイルズは完全版が出てからが本番」という認識が広まるきっかけとなりました。

【ライザのアトリエDX】既存ユーザーへのアップグレードパスなし問題

『ライザのアトリエ』シリーズでは、3部作の完結後に発売された「DX版」の仕様が議論を呼びました。

過去作にDLCや追加要素をセットにした決定版として発売されましたが、すでにオリジナル版のプレミアムボックスなどを購入していた熱心なファンに対する救済措置が十分ではありませんでした。

既存のソフトを「DX版」相当にアップグレードするDLCの販売やパスが存在せず、追加された微細な新規要素を楽しむためには、ソフトを丸ごと買い直す必要があったのです。

すでに全作品を揃えているファンほど、「中身はほとんど同じなのに、またフルプライスで買わなければならないのか」という理不尽さを感じることとなりました。

【その他】ポケモン、妖怪ウォッチ、ダンボール戦機などの事例

子供向けのタイトルでも、完全版商法に近い手法は古くから存在します。

『ポケットモンスター』シリーズでは、『赤・緑』に対する『青・ピカチュウ』、『ダイヤモンド・パール』に対する『プラチナ』のように、マイナーチェンジ版と呼ばれる第3のバージョンが恒例となっていました。

また、レベルファイブの『妖怪ウォッチ』や『ダンボール戦機』シリーズでは、短期間で「バスターズ」などのバージョン違いや完全版にあたるパッケージが乱発された時期がありました。

これらはターゲット層が子供であるため、親が何度も同じようなゲームを買わされることへの負担感や、友達同士でバージョンの違いによる疎外感が生まれるなどの問題も指摘されていました。

ゲーム以外にも波及?映画『ガンダムSEED』特別版の事例

映画における完全版商法とは?興行収入アップの戦略

完全版商法の手法はゲーム業界にとどまらず、映画業界でも見られるようになっています。

近年話題となったのが、映画『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』の特別版上映です。

映画における完全版商法とは、公開終了後や公開期間中に、カットの修正や追加シーンを加えたバージョンを「特別版」として再上映する手法を指します。

これは、熱心なファンにリピート鑑賞を促し、興行収入をさらに伸ばすための戦略として機能しています。

特典商法と組み合わされることも多く、ファンは「新しいシーンを確認したい」「よりクオリティの上がった映像を見たい」という動機で再び劇場へ足を運びます。

新規カット追加やエピローグ上映に対するファンの反応

『ガンダムSEED FREEDOM』の特別版では、500カット以上の修正やエピローグカットの追加が行われました。

これに対しファンからは、「作り手のこだわりが見られて嬉しい」「もっと良くなった映像を見れるなら喜んで払う」という肯定的な意見が多く聞かれました。

ゲームとは異なり、映画のチケット代(約2,000円)はゲームソフト(約1万円)に比べて安価であることや、映画館という体験自体に価値があるため、比較的批判は少ない傾向にあります。

また、監督自身が「時間の都合で納得いかなかった部分を直した」と説明しており、クリエイターの執念として好意的に受け止める層も一定数存在します。

ただし、「最初から完成した状態で見せてほしかった」という意見もゼロではなく、パッケージ化の際にどのバージョンが収録されるのかといった懸念も残されています。

完全版商法の未来とユーザーの付き合い方

モンハンやポケモンに見る「DLC拡張」への移行トレンド

ゲーム業界全体としては、従来の「パッケージ買い直し型」の完全版商法から、DLCによる「大型拡張型」へとシフトしつつあります。

『モンスターハンター』シリーズでは、かつては『G』付きの完全版を別ソフトとして販売していましたが、『ワールド』や『ライズ』からは大型拡張コンテンツ(アイスボーン、サンブレイク)をDLCとして販売する形式に変わりました。

『ポケットモンスター』シリーズも、『ソード・シールド』以降はマイナーチェンジ版を出さず、エキスパンションパスによる追加コンテンツの配信を行っています。

これにより、ユーザーはセーブデータを引き継ぎつつ、安価に追加要素を楽しめるようになり、メーカー側も中古市場への流出を防げるというメリットを享受しています。

完全版商法はなくならない?開発費高騰とクリエイターの「作り込みたい」意欲

DLCへの移行が進む一方で、完全版商法が完全になくなることはないでしょう。

近年のゲーム開発費は高騰の一途をたどっており、一度の販売だけでは開発費を回収しきれないケースが増えています。

既存のアセット(素材)を流用して完全版を出し、再度フルプライスで販売することは、メーカーにとって手堅い収益確保の手段となります。

また、クリエイターの「発売後に思いついたアイデアを入れたい」「納期で削った部分を実現したい」という意欲も根強く、技術的な制約からDLCでは対応できないシステム変更を伴う場合、別パッケージにせざるを得ない事情もあります。

企業としての存続とクリエイティビティの追求という両面から、今後も形を変えながら続いていく可能性があります。

発売日に買うべきか待つべきか?賢い購入判断の基準

完全版商法が存在する以上、私たちは賢く購入判断をする必要があります。

発売日に買うべきか、様子を見るべきかの基準として、以下のポイントを参考にしてください。

まず、「その作品を今すぐ話題共有したいか」が重要です。SNSでの盛り上がりやネタバレ回避を重視するなら、発売日に買う価値は十分にあります。

次に、「メーカーの過去の傾向」を確認しましょう。アトラスやコーエーテクモなど、完全版やパワーアップキットを出す傾向が強いメーカーの作品で、かつストーリー重視のRPGの場合は、急いでいなければ様子見をするのも一つの手です。

最後に、「DLC対応の有無」をチェックします。事前に「追加コンテンツで拡張予定」とアナウンスされている場合は、後から完全版を買わされるリスクは低いと判断できます。

自分のプレイスタイルと照らし合わせ、納得のいくタイミングでゲームを手に取ることが、ストレスなく楽しむための秘訣です。

まとめ:完全版商法の歴史と今後を見極めるポイント

  • 完全版商法とは、既存ゲームに追加要素を足して再販する手法である

  • リメイクとは異なり、基本部分は同じであるため批判されやすい

  • DLCと違い、セーブデータが引き継げない点がユーザーの不満要因だ

  • セガの決算でも、完全版への懸念が買い控えを招いていると指摘された

  • アトラス作品は完成度が高い反面、完全版のリリース頻度が高い

  • ドラクエ11Sやテイルズなど、ハードまたぎによる炎上事例も多い

  • 映画業界でも、クオリティアップを目的とした特別版上映が行われている

  • 近年はモンハンやポケモンのようにDLCでの拡張へ移行する傾向がある

  • 開発費回収やクリエイターの意地により、完全版商法は今後も続く可能性がある

  • メーカーの傾向を見極め、自分の価値観に合ったタイミングで購入することが大切だ

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