サイレントヒルシリーズの魅力は、霧に包まれた町並みや難解なストーリーだけだと考える人もいると思いますが、もちろんそれでもOKです。
事実として、それらと同じくらい魅力的なのが、プレイヤーの前に立ちはだかる異形のクリーチャーたちですね。
それらの存在は単なる「敵」ではなく、主人公たちの心の闇やトラウマ、苦悩が具現化したものです。
なお、本記事では、シリーズの中でも特に印象的なクリーチャーである『サイレントヒル3』の「クローサー」を中心に、「ミショナリー」、そして『ホームカミング』の「サイアム」や「アスフィクシア」について、そのデザインに隠された意味や背景を深掘りして解説しますね。
『サイレントヒル3』の恐怖の象徴:クローサー (Closer)
クローサーとは? – 基本概要
クローサーは、『サイレントヒル3』の序盤、ショッピングモールで主人公ヘザーが初めて遭遇する大型の人型クリーチャーです。
その名前は、ヘザーの進む道を物理的に「塞ぐ(Close)」姿や、執拗に「近づいてくる者(Closer)」という両方の意味を持つとされています。
非常に巨大な体躯と、地面を引きずるほど長く太い腕が特徴で、その腕を鈍重に振り回して攻撃してきます。
『サイレントヒル2』に登場したマンダリン(天井を移動するクリーチャー)が地上に上がった姿、とも言われていますね。
デザインに隠された二重の恐怖:母の虐待と性的不安
クローサーのデザインには、主人公ヘザー(=アレッサ)が抱える二重の恐怖が色濃く反映されています。
第一の象徴は、前世であるアレッサの記憶です。
『サイレントヒル1』のアレッサの部屋には、子供が描いた「巨人に怯える子供」の絵が残されています。
これは、幼いアレッサが狂信的な母ダリアから受けていた虐待の恐怖を反映したものであり、子供にとっての「大人(=ダリア)」が理不尽な力を持つ「巨人」として描かれています。
クローサーの巨大な腕は、そのダリアによる身体的虐待(殴打)の記憶の象徴と考察されています。
第二の象徴は、ヘザー自身の不安です。
思春期の少女であるヘザーが抱える、社会的な不安や性的な恐怖が盛り込まれています。
クローサーが身に着けているハイヒールや短いスカートは、ヘザー自身の服装を歪んだ形で模倣したものであり、女性性への嘲笑とも取れます。
さらに、顔のように見える部分は巨大な唇が金属リングで固定されたグロテスクな形状をしており、これは「性的オブジェ」として見られることへの恐怖や嫌悪感を強く象徴しています。
「Like Lotus Sutra」:背負わされた輪廻の苦しみ
クローサーの異様な頭部には、「Like Lotus Sutra(法華経のように)」というタトゥーが彫られています。
これは仏教における「輪廻(サマサーラ)」や「苦(ドゥッカ)」の概念を示唆しています。
アレッサからヘザーへと転生し、再び「神」の母体としての運命を背負わされたヘザー自身の、逃れられない苦しみのサイクルを体現しているのが、このクローサーというわけです。
彼女の行く手を阻む「番人」であり、同時に「もう諦めてしまいたい」というヘザー自身の弱さの具現化でもあります。
父の仇敵:ミショナリー (Missionary)
ミショナリーは、『サイレントヒル3』の中盤、ヘザーの自宅アパートで対峙することになるボスクリーチャーですね。
「宣教師」という名前の通り、教団の白い貫頭衣を身につけ、頭は袋で覆われています。
最大の特徴は、伸縮自在の刃が付いたトンファーを両手に装備している点です。
音や光に敏感で、ヘザーの銃撃をトンファーで防御するなど、クローサーとは対照的に高い戦闘能力を持っています。
ミショナリーは、教団の司祭クローディアの傀儡(かいらい)であり、ヘザーの養父ハリー・メイソンを殺害した張本人です。
こんなことを言うとアレですが、、、とはいえ、結局のところ、ヘザーにとっては「父の仇」であり、彼女の憎悪を煽り立て、胎内の「神」を成長させるための直接的な引き金となった存在ですね。
『ホームカミング』の歪んだ結合:サイアム (Siam)
サイアムは、『サイレントヒル ホームカミング』に登場するクリーチャーです。
筋骨隆々の男性的な肉体と、その背中に縛り付けられた(あるいは融合した)女性的な肉体という、歪んだ結合を果たした姿をしています。
これは、主人公アレックス・シェパードの弟ジョシュアへの歪んだ執着や、性的な抑圧、あるいは男女間の葛藤や緊張関係が具現化したものだと考察されています。
ぶっちゃけその巨体から繰り出されるパワーは絶大でして、『ホームカミング』を象徴するクリーチャーの一つです。
窒息する恐怖:アスフィクシア (Asphyxia)
アスフィクシアもまた、『サイレントヒル ホームカミング』に登場するボス級のクリーチャーです。
その名前は「窒息」を意味しますね。
デザインは、複数の人体がムカデのように長く結合し、顔や呼吸器系が皮膚で覆われた異様な姿をしています。
これは、シェパードグレンの町で起きた事件の犠E\x89牲者であり、窒息死させられた少女ノラ・ハロウェイの最期の恐怖と苦しみが具現化した存在です。
甲高い悲鳴のような声を上げながら、その多関節の体をしならせて襲いかかります。
まとめ
サイレントヒルシリーズに登場するクリーチャーたちは、単にプレイヤーを怖がらせるためだけの存在ではありません。
クローサーが象徴する「過去のトラウマと思春期の不安」。
ミショナリーが象徴する「憎悪の対象」。
サイアムが象徴する「歪んだ執着と葛藤」。
アスフィクシアが象徴する「死の瞬間の苦痛」。
これら印象的なクリーチャーたちは、いずれも登場人物たちの深層心理や、物語の背景にある重いテーマを映し出す「鏡」なのです。
彼らのデザインに隠された意味を考察することで、サイレントヒルの物語をより深く理解できるかなと思います。
しかし、このあたりは解釈の問題なので、色々と考察してみるといいですね。


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