アンダーテール(UNDERTALE)のスピードランに興味を持ったものの、バグ技の種類が多すぎてどこから手をつければよいかわからない、という声は少なくありません。
パンチカードバグ、Wrong Warp、Overflowなど、名前を聞いたことはあっても具体的な仕組みや実践手順までは把握できていない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、アンダーテールで使われる主要なバグ技の原理から実践方法、バージョンごとの違い、初心者が選ぶべきカテゴリー、そして最新のスピードラン動向まで、網羅的に解説していきます。
バグ技を理解すれば、RTAへの第一歩を踏み出せるだけでなく、配信や動画で見かけるプレイの裏側も深く楽しめるようになるでしょう。
アンダーテールのバグ技とは?RTAにおける役割を解説
アンダーテールのバグ技とは、ゲーム内の意図されていない挙動を利用して、本来必要なイベントやカットシーンをスキップする技術のことです。
RTA(リアルタイムアタック)では、これらのバグ技を駆使することでクリアタイムを大幅に短縮できます。
アンダーテールは2015年にToby Fox氏が開発したRPGで、2025年9月に10周年を迎えました。
リリースから10年以上が経過した現在も、スピードランコミュニティは活発に活動しており、新しい短縮技の発見や記録更新が続いています。
speedrun.comの公式リーダーボードには800人以上の走者が記録を投稿しており、バグ技を活用したカテゴリーは特に研究が盛んです。
バグ技は大きく分けると、パンチカードというアイテムを起点とするものがほとんどを占めています。
たった1枚の紙切れが、ゲーム全体の構造を揺るがすほどの影響力を持っている点が、アンダーテールのバグ技の最大の特徴といえるでしょう。
パンチカードバグ(PCE)の仕組みと基本操作
パンチカードとは何か
パンチカードは、Waterfallエリアの「ナイスクリーム屋」からナイスクリームを購入した際にオマケとして入手できるアイテムです。
ゲーム内では一見すると地味な存在ですが、スピードランの世界ではゲームを根本から変える最重要アイテムとして知られています。
メニュー画面からパンチカードを「使う」と、画面上に紙切れの画像が表示されます。
この表示の仕組みに特殊な挙動が存在しており、それがすべてのパンチカードバグの出発点となっています。
PCE(Punch Card Exploit)の原理
PCEの核心は、パンチカードを使用した直後の1フレーム(1/30秒)だけ、キー入力が受け付けられてしまうという仕様にあります。
通常、イベントが始まるとプレイヤーは移動できなくなります。
しかし、イベント開始地点でメニューを開いた状態からパンチカードを使用すると、パンチカード表示中にイベントが開始されます。
パンチカードを閉じた瞬間に「移動可能フラグ」がONに戻るため、イベントが進行中であるにもかかわらず自由に動き回れる状態が生まれるのです。
あとはそのまま先へ進めば、カットシーンを丸ごとスキップできます。
PCEの実践手順
PCEを成功させるには、まずイベント発動地点の1目盛り手前に正確に立つ必要があります。
この位置調整には「バッファーステップ」と呼ばれるテクニックを使います。
メニューキー(Ctrlキー)と矢印キーを同時に押すことで、メニューを開きながら1目盛りだけ移動できる仕組みです。
位置が決まったら、イベント方向の矢印キーとメニューキーを同時に押してイベント地点に踏み込み、メニューが開いた状態でアイテム欄からパンチカードを使用します。
パンチカードの裏にテキストボックスが見えたり、カメラが移動し始めたりすれば成功の合図です。
決定キーを押してパンチカードを閉じれば、自由に移動できるようになります。
Wrong Warpの仕組みとソフトロックの危険性
Wrong Warpの基本原理
Wrong Warpは、エリア移動時の出現位置を本来の座標から別の座標に書き換えるバグ技です。
各エリアには通常の出入口に対応した出現位置のほかに、セーブ後のロード時に使用される「固有の出現座標」が設定されています。
パンチカードを使用した際のフラグ変化をエリア移動の暗転中に発生させることで、出現座標がこの固有座標に上書きされます。
固有座標が本来の出現位置よりも進行方向の先にある場合、移動距離の短縮につながり、タイムを削ることができます。
Wrong Warpの実行方法
まず、あと1目盛り移動すると次のエリアに移動する地点を把握し、壁際に立ちます。
壁方向とエリア移動方向の矢印キーを同時に押した状態でパンチカードを使用すると、パンチカードが表示された状態で画面が暗転し始めます。
暗転が始まったら、すぐに矢印キーから指を離し、決定キーを連打してパンチカードを閉じます。
成功すれば、本来とは異なる位置にワープできます。
ソフトロックのリスクと対策
Wrong Warpには致命的なリスクが伴います。
暗転が終了する前にパンチカードを閉じられなかった場合、移動可能フラグがONに戻らず、操作を一切受け付けない「ソフトロック」状態に陥ります。
こうなるとプレイヤー側で解決する方法はなく、ゲームを再起動してセーブ地点からやり直すしかありません。
TPルート(バグ有)のチャートでは、ソフトロックの危険性がある場所が10か所以上存在すると報告されています。
対策として、セーブポイントを見かけるたびにこまめにセーブしておくことが強く推奨されています。
また、上方向へのエリア移動時は右壁ではなく左壁に沿ってWrong Warpを行うことで、パンチカードの「Info」を誤って選択するミスを防げます。
Overflow(Text Storage)の詳細と使用制限
Overflowとは何か
Overflowは、パンチカード使用直後の1フレームで決定キーを入力し、テキストボックスを画面上に保持したまま移動可能にするバグ技です。
「Text Storage」という別名でも呼ばれており、保持したテキストボックスをさまざまな場面で活用できる点が特徴です。
イベントの素通り、会話のバグらせによる短縮、アイテム取得フラグの重複、エリア移動座標の変更など、応用範囲は多岐にわたります。
バージョンによる使用制限
Overflowには重大な制限があります。
ver1.05以降のバージョン、つまり日本語版を含むすべての新しいバージョンでは、1フレーム差入力の仕様が修正されており、Overflowを使用することができません。
英語版のv1.001以前でのみ有効な技となっています。
さらに、Windows版とLinux版で難易度が大きく異なる点も見逃せません。
Windows版ではZキーとEnterキーを1/30秒差で「片方を押してから離し、もう片方を押す」という操作が必要で、安定させることは極めて困難です。
一方、Linux版ではZとEnterの同時押しが可能なため、難易度が大幅に下がります。
このため、Overflowを使用するスピードランナーの多くがLinux版を採用しています。
Overflow Wrong Warp(OWW)
OverflowとWrong Warpを組み合わせた複合技も存在します。
Overflowで保持したテキストボックスをエリア移動の暗転中に閉じることで、Wrong Warpを成立させる手法です。
通常のWrong Warpと異なりソフトロックのリスクがないという利点がありますが、Overflow自体がver1.05以降では使えないため、現在の日本語版プレイヤーには関係のない技となっています。
その他の重要なバグ技まとめ
Mad Dummy Skip
Mad Dummyとの戦闘に入る瞬間と同時にエリアを出ることで、戦闘を丸ごとスキップするバグ技です。
成功猶予がわずか1フレーム(1/30秒)と報告されており、全バグ技の中でもトップクラスの難易度を誇ります。
Alt-Spaceバッファリングという代替的なセットアップ手法も開発されていますが、いずれにしても高い精度が要求されます。
Onedyne(1サイクルUndyneスキップ)
Undyneの追跡イベントを大幅に短縮するバグ技です。
以前は非常に高難度でしたが、新しいセットアップが開発されたことで成功率が大きく向上したと報告されています。
具体的には、2回PCEを行った後にパンチカードを再度開き、テキストを進めてUndyneが槍を持って向かってきた約0.5〜0.7秒後に左上を入力するという手順です。
暗転したら移動キーを離すことで成功となります。
Sea-Grass Skip
Waterfallエリアで約30秒の短縮が見込めるスキップ技です。
短縮効果が大きいことから、上級者の間では「やる価値が高い」と広く認識されています。
News Show Skip
Mettatonのニュースショーイベントをスキップする技で、パンチカードスキップの中でもトップレベルの難しさといわれています。
成功すればイベントを丸ごと飛ばせるため、リターンは非常に大きいものの、安定して決められるプレイヤーは限られています。
レーザースキップ
HPを7以下に調整した状態でHotlandのレーザーに当たると、NPCがレーザーを切ってくれるイベントが発生します。
パンチカードと組み合わせることで、このイベントの会話中に移動できるようになり、さらに保持した会話テキストを後続のスキップに再利用する連携技へと発展します。
RTA用テクニック一覧|バグ技を支える基礎操作
Button Mashing(高速文字送り)
Z、X、Enter、Shiftの4つのキーを超高速で順に連打し、テキストを最速で送る技術です。
アンダーテールはRPGのためテキスト量が膨大であり、文字送りの速度差がエンディングまでに分単位の差となって現れます。
一般的に「最終的なタイム差はここに集約される」といわれており、すべての操作テクニックの中で最も重要とされています。
Wall Humping(壁際走り)
上端の壁付近で上キーと下キーを同時に押すことで、その場で超高速に上下に震える動作を行う技術です。
Genocideルートのようにモンスターと大量にエンカウントする必要がある場面で、移動せずにその場で歩数を稼げる点が最大の利点です。
Switch版ではジョイコンを本体から切り離した状態で上下同時押しすることで実行可能です。
Buffer Steps(バッファーステップ)
メニューキーと矢印キーを同時に押すことで、1目盛りだけ正確に移動するテクニックです。
バグ技の事前準備として主人公の立ち位置を目盛り単位で調整する際に不可欠な操作であり、右Ctrlキーと矢印キーの組み合わせが推奨されています。
バージョン別の違いと選び方ガイド
アンダーテールには複数のバージョンが存在し、どのバージョンを使うかによってRTAの難易度やタイムが大きく変わります。
以下の表に主要バージョンの特徴をまとめました。
| バージョン | 言語 | Overflow | PCE / WW | 同時押し仕様 | 推奨用途 |
|---|---|---|---|---|---|
| v1.001 Linux | 英語 | 使用可能 | 使用可能 | Zキー+Enterの同時押しが有効 | 英語版バグ有RTA |
| v1.05 | 日本語対応 | 使用不可 | 使用可能 | 同一ボタン1f差入力が不可 | 日本語版RTA全般 |
| v1.11(Switch) | 日本語対応 | 使用不可 | 使用可能(高難度) | ジョイコン分離で一部対応 | Gルート(エレベーターバグ) |
日本語版と英語版を比較すると、テキストの文字数が短い日本語版のほうが各イベントの時間を短縮できるため、ほとんどのカテゴリーで日本語版が有利です。
Overflowが使えない不利を差し引いても、日本語版の文字数による短縮効果のほうが大きいと考えられています。
speedrun.comでは日本語版と英語版でカテゴリーが分離されているため、記録提出の際にはバージョンの確認が必要です。
Linux版はWindowsパソコンでも導入可能で、データファイルの拡張子を変更してWindows版と差し替えるだけで使用できます。
バグ技の精度を高めたい場合にはLinux版の導入を検討する価値があるでしょう。
Switch版は「長エレベーターを出入りするだけで各階を往復できるバグ」が存在するため、理論上はGルート最速バージョンとされています。
ただし、接続可能なキーボードが限られることや多重起動ができないことから、Genocide以外のカテゴリーではPC版のほうが速いとされています。
初心者がバグ技RTAを始める際の注意点
まず通常プレイを完了させる
バグ技はストーリーの大部分をスキップするため、ゲームの内容をほとんど見ずに進むことになります。
アンダーテールはストーリーや演出に高い評価を受けている作品ですので、初見プレイではバグ技を使わずにゲームを楽しむことが一般的に推奨されています。
カテゴリーの選び方
RTAを始める際は、いきなりバグ有カテゴリーに挑戦するのではなく、バグ技が不要なカテゴリーから始めるのが定石です。
NルートやTPルート志向であれば「TPE Glitchless(バグ無し)」、Gルート志向であれば「Neutral Glitchless(バグ無し)」が初心者に適しています。
操作に慣れてからバグ有カテゴリーへ移行するという段階的なアプローチが効果的です。
RTAのルールを事前に確認する
speedrun.comに記録を提出する場合、いくつかの厳格なルールを遵守する必要があります。
セーブデータの完全リセット(AppData内のUNDERTALEフォルダのデータ削除)は必須であり、ゲーム内のリセット機能ではフラグが完全にリセットされません。
デバッグモードをONにしたまま本走を行うとルール違反で失格になります。
Steamのクラウド機能をOFFにしないと、削除したセーブデータが復元されてしまう可能性がある点にも注意が必要です。
デメリットとリスクの理解
バグ技を多用するRTAには固有のリスクが伴います。
Wrong Warp失敗時のソフトロックは最も深刻で、セーブしていない進行分がすべて失われます。
また、バグ技の練習には相応の時間がかかり、特にMad Dummy Skipのような1フレーム技を安定させるには長期的な練習が必要です。
フライパンによる攻撃のパーフェクト判定など、バグ技以外の操作精度も記録に大きく影響するため、「フライパンを毎日1000回振って精度を高めよう」という冗談まじりの格言がコミュニティでは共有されています。
アンダーテールバグ技の最新動向と2026年のトレンド
スピードラン記録の最新状況
2025年から2026年にかけて、複数のカテゴリーで世界記録が更新されています。
Genocide(殲滅ルート)では1時間03分08秒の記録がポーランドの走者によって樹立され、その後さらなる更新も報告されています。
2026年1月のUndertaleスピードラン月間レポートでは「Genocideカテゴリーで最後の1分の壁が破られた可能性がある」と伝えられました。
Neutral(バグ有)では51分20秒台の記録がリーダーボードの最上位に位置しています。
GDQイベントでの採用
2026年1月に開催されたAGDQ 2026では「Early Punch Card Neutral」というカテゴリーが提出されました。
GDQ Hotfixの「Game Masters」企画でもアンダーテールのスピードランが披露され、バグ技を駆使したプレイが話題を集めています。
2026年3月のFrost Fatales 2026のスケジュールにもアンダーテール関連のコンテンツが含まれており、コミュニティの注目度は依然として高い状況です。
新カテゴリーの拡充
speedrun.comのCategory Extensionsページでは、「Early Punch Card」「1.05 Input Patch」「All Skippable Text」など、新しいカテゴリーが活発に追加されています。
Early Punch Cardは最初からパンチカードを所持したデータを使用するカテゴリーで、Neutral、Genocide、Early Gameの3種が存在します。
1.05 Input Patchはv1.05をv1.001の入力システムに変更するMODを使用できるカテゴリーで、日本語版でもOverflowを試せる環境を提供しています。
日本人走者の現状
日本語版の研究は海外版と比較すると進んでいないと指摘されています。
日本人走者が少ないことが要因であり、コミュニティでは新規プレイヤーの参入が求められています。
日本語での情報発信としては、RTAガイドブログや解説記事、Discord日本語サーバーなどが整備されており、これから始める人にとっての情報基盤は整いつつあります。
10周年とアンダーテール関連の最新ニュース
2025年9月に10周年を迎えたアンダーテールは、Toby Fox氏による公式記念配信イベントを2日間にわたって開催し、約36万ドルの寄付金を集めました。
配信中には通常プレイではアクセスできない新エリアのティーザーが公開され、ファンの間で大きな話題となっています。
続編にあたるDeltarune Chapter 5は2026年後半のリリースが示唆されており、アンダーテール全体の注目度は今後も持続すると見られています。
2026年1月にはスクウェア・エニックスからチルアレンジアルバム「UNDERTALE: CHITEI DE CHILL」が発売されるなど、音楽面でも展開が続いています。
まとめ:アンダーテールのバグ技を理解して実践に活かそう
- アンダーテールのバグ技の大半は「パンチカード」を起点とし、カットシーンスキップやワープ位置変更を実現する
- PCE(Punch Card Exploit)はイベント地点でパンチカードを使用し、移動可能フラグの挙動を利用してカットシーンを素通りする技である
- Wrong Warpはエリア移動時の出現座標を書き換える技だが、失敗するとソフトロック(操作不能)に陥るリスクがある
- Overflow(Text Storage)はver1.05以降の日本語版では使用不可であり、英語版v1.001以前に限定される
- Linux版はZキーとEnterの同時押しが有効なため、バグ技の難易度がWindows版より大幅に低い
- 日本語版はテキスト文字数の短さにより、Overflowが使えない不利を差し引いても多くのカテゴリーで英語版より高速である
- 初心者はバグ無しカテゴリー(TPE GlitchlessまたはNeutral Glitchless)から始めるのが定石である
- ソフトロック対策としてセーブポイントでのこまめなセーブが不可欠である
- 2025〜2026年にかけてGenocide世界記録が1時間03分台に突入し、GDQイベントでも採用が続いている
- 日本語版の研究はまだ発展途上であり、新規走者の参入がコミュニティから期待されている

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