『メタルギアソリッドV ファントムペイン』をプレイする中で、「エイハブ」や「イシュメール」といった謎の多い名前に戸惑った方もいるのではないでしょうか。
特に、主人公がなぜ「エイハブ」と呼ばれるのか、そして彼を導く包帯の男「イシュメール」との関係性は、物語の核心に迫る重要な謎です。
この記事では、『メタルギアソリッドV』における「エイハブ」の正体、イシュメールとの関係性、そしてその名前に隠された元ネタや意味を、関連作品の情報も交えながら徹底的に解説します。
物語の衝撃的な真実を知ることで、ヴェノム・スネークの悲劇的な運命と、プレイヤーに託されたメッセージをより深く理解できるでしょう。
『メタルギアソリッドV』の「エイハブ」とは?その正体を徹底解説
エイハブの正体は主人公「ヴェノム・スネーク」の仮初の名
結論から言うと、「エイハブ」とは、『メタルギアソリッドV ファントムペイン』(MGSV:TPP)の主人公であるヴェノム・スネークが、9年間の昏睡から目覚めた直後に与えられた仮の名前です。
物語の序盤、キプロスの病院で目覚めた主人公は、医師から「エイハブと名乗れ」と指示されます。
これは、彼の存在を追っ手から隠すための偽名であり、物語が進むにつれて彼は「ヴェノム・スネーク」というコードネームで呼ばれるようになります。
なぜ「エイハブ」と名乗る必要があったのか?その理由
エイハブと名乗る必要があったのは、彼の正体を隠し、敵の目を欺くためでした。
1975年のマザーベース壊滅事件により、伝説の兵士ビッグ・ボスは消息不明となります。
彼の生存を察知した敵対組織「XOF」は、その命を完全に絶つため、彼が入院している病院を襲撃します。
この危機的状況で、彼の身代わり、つまり「ファントム(幻影)」として敵の注意を引きつける役割を担わされたのが、プレイヤーが操作する主人公だったのです。
「エイハブ」という偽名は、この身代わり作戦の第一歩でした。
プレイヤーが操作するキャラクターの衝撃的な真実
物語の終盤で明かされる衝撃的な事実、それはプレイヤーが操作してきたヴェノム・スネーク(エイハブ)は、本物のビッグ・ボスではなかったということです。
彼の正体は、かつてビッグ・ボスが率いた組織「MSF(国境なき軍隊)」に所属していた、一人の優秀な「メディック(衛生兵)」でした。
彼はマザーベース壊滅の際、爆発から身を挺して本物のビッグ・ボスを庇い、同じく昏睡状態に陥っていたのです。
エイハブとイシュメールの関係性|名前の元ネタは小説『白鯨』
謎の包帯男「イシュメール」の正体は本物のビッグ・ボス
病院でエイハブ(ヴェノム・スネーク)を導き、脱出の手助けをする顔を包帯で覆った謎の男「イシュメール」。
彼の正体こそが、本物のビッグ・ボス本人です。
彼はヴェノムよりも少し早く昏睡から目覚め、敵の襲撃が迫る中、自らの影武者となるメディックを護衛し、導く役割を担っていました。
つまり、『MGSV:TPP』の序盤は、本物のビッグ・ボスが、ビッグ・ボスの影武者を操作して病院から脱出させるという、非常にメタ的な構造になっているのです。
名前の意味と由来は?小説『白鯨』の登場人物との共通点
「エイハブ」と「イシュメール」という名前は、アメリカの作家ハーマン・メルヴィルによる長編小説『白鯨』の登場人物から取られています。
名前 | 『白鯨』における役割 | 『メタルギアソリッドV』における役割 |
---|---|---|
エイハブ | 巨大な白い鯨モービー・ディックに片足を奪われ、復讐に燃える捕鯨船の船長。 | MSFを壊滅させたスカルフェイスへの復讐を誓う、ビッグ・ボスの影武者。 |
イシュメール | 物語の語り部であり、エイハブ船長の復讐劇を見届ける船員。 | エイハブ(ヴェノム)を導き、その後の物語を影から見届ける本物のビッグ・ボス。 |
このように、両者の名前と役割は、『白鯨』の物語構造と深くリンクしています。
ダイヤモンド・ドッグズが使用するヘリのコールサイン「ピークォド」なども、エイハブ船長が乗る船の名前に由来しており、作品全体が『白鯨』をモチーフにしていることがわかります。
なぜ『MGSV』のテーマに「白鯨」が選ばれたのか?物語の核となる「復讐」
『MGSV:TPP』の物語は、仲間や故郷を奪われた者たちの「復讐」を大きなテーマとしています。
これは、『白鯨』においてエイハブ船長がモービー・ディックへ抱く執拗なまでの復讐心と重なります。
スカルフェイスへの報復に燃えるヴェノム・スネークとカズヒラ・ミラーの姿は、まさにエイハブ船長の狂気的な執念を彷彿とさせます。
しかし、物語は単なる復讐劇に終わりません。
復讐を果たした先には何も残らないという虚しさと、終わることのない痛みの連鎖(ファントムペイン)を描くことで、「復讐」という行為そのものへの問いをプレイヤーに投げかけているのです。
なぜ影武者になったのか?ヴェノム・スネーク(エイハブ)の悲劇的な生涯
彼の本来の姿はMSFで最も優秀だった「メディック(衛生兵)」
ヴェノム・スネークの本来の姿は、ビッグ・ボスから「MSFの中で最も優秀だった」と評されるほどの兵士であり、衛生兵(メディック)でした。
『MGSV:GZ』の終盤、ヘリに同乗していた彼は、パスの体内に仕掛けられた爆弾の爆発から、身を挺してビッグ・ボスを庇います。
この勇敢な行動により、彼は左腕を失い、全身に100以上の骨や金属片が突き刺さる瀕死の重傷を負い、9年間の昏睡状態に陥りました。
この事実は、彼が元々ビッグ・ボスに対して非常に強い忠誠心を持っていたことを示しています。
ゼロ少佐が発案した「影武者計画」の全貌
この「影武者計画」は、ビッグ・ボスと袂を分かったかつての盟友であり、サイファー(後の愛国者達)の創設者であるゼロ少佐によって発案されました。
ゼロは、部下であるスカルフェイスの独断によるMSF壊滅を本意としておらず、かつての友であるビッグ・ボスの命を守るためにこの計画を立案します。
昏睡状態にあるメディックの素質を見込み、オセロットに指示して、強力な暗示と記憶の追体験によって彼をビッグ・ボスのファントムへと作り変えたのです。
顔の整形手術も行われ、彼は自分自身を完全にビッグ・ボス本人だと思い込むことになります。
ヴェノム・スネークが「かわいそう」と言われる理由
ヴェノム・スネークが「かわいそう」と言われる最大の理由は、彼が自らの意思とは関係なく、他人の人生を歩まされ、最後はその他人の身代わりとして死んでいった点にあります。
彼は英雄ビッグ・ボスを救うために全てを犠牲にしましたが、その結果、自分の名前も顔も過去も、全てを奪われました。
そして、ビッグ・ボスの「幻影」として戦い続けた末に、初代『メタルギア』でソリッド・スネークに倒されるという運命を辿ります。
その存在は歴史の影に葬られ、彼を倒したソリッド・スネークでさえ、その事実を知ることはありませんでした。
忠義を尽くした結果、誰にも知られることなく忘れ去られてしまう彼の生涯は、あまりにも悲劇的と言えるでしょう。
「俺はお前であり、お前は俺だ」ビッグボスがファントムに託した想いとは
物語の最後に、ヴェノム・スネークは自分が影武者であったという真実を思い出します。
その際、本物のビッグ・ボスからのカセットテープに残されたメッセージを聞くことになります。
そこでビッグ・ボスは、彼を単なる影武者ではなく、「俺たちは二人でビッグ・ボスだ」「俺はお前であり、お前は俺だ」と、自身の半身であり、もう一人の自分であると認めます。
そして、彼への感謝と共に「友よ」と呼びかけ、これからの歴史を共に刻んでいくことを誓うのです。
これは、ヴェノム・スネークのこれまでの戦いと生き様を肯定し、彼もまた正当な「蛇」の系譜に連なる者であると認めた、ビッグ・ボスからの最大限の敬意と信頼の言葉でした。
ヴェノム・スネークはなぜ強い?ビッグ・ボスに匹敵する能力の秘密
昏睡中の記憶移植とオセロットによる強力な自己暗示
ヴェノム・スネークがビッグ・ボスに匹敵する戦闘能力を持つ理由は、彼が元々MSFで最も優秀と評されるほどの兵士であったことに加え、9年間の昏睡状態の間に行われた特殊な処置にあります。
オセロットによる強力な催眠療法や自己暗示によって、ビッグ・ボスの過去の作戦記録(スネークイーター作戦など)を追体験させられ、その経験と知識、技術が深く刷り込まれました。
これにより、彼はビッグ・ボスの記憶と人格を持つに至り、本来の素質と合わさることで、本物と見紛うほどの能力を発揮することが可能になったのです。
左腕の義手「バイオニック・アーム」の多彩な特殊能力
ヘリの墜落で失った左腕の代わりに装着された真っ赤な義手「バイオニック・アーム」も、彼の強さを支える重要な要素です。
この義手は開発を進めることで、高圧電流を放つ「スタンアーム」や、義手自体をロケットのように射出する「ロケットアーム」など、多彩な機能を追加できます。
壁をノックして敵の注意を引いたり、アクティブソナーで敵の位置を探知したりと、潜入任務において絶大な効果を発揮し、彼の戦闘能力を人間以上に高めています。
ダイヤモンド・ドッグズを率いた指揮官としてのカリスマ性
ヴェノム・スネークは、戦闘能力だけでなく、軍事組織「ダイヤモンド・ドッグズ」の指揮官としても卓越したカリスマ性を見せます。
彼はマザーベースのスタッフたちを「家族」と呼び、仲間を非常に大切にします。
特に、基地内で発生したパンデミックにより、自らの手で仲間たちを殺害せざるを得なくなったエピソード「死してなおも輝く」では、彼の深い仲間への想いが描かれ、多くのプレイヤーに衝撃を与えました。
その寡黙ながらも温かい人柄は、多くの兵士たちを惹きつけ、組織を拡大させる原動力となったのです。
ヴェノム・スネーク(エイハブ)の最期|なぜソリッドに殺されたのか?
初代『メタルギア』で倒されたビッグ・ボスはヴェノムだったという真実
1987年に発売された記念すべき第一作『メタルギア』。
この作品の最後にプレイヤー(ソリッド・スネーク)が倒す敵の黒幕「ビッグ・ボス」こそ、ヴェノム・スネークその人です。
『MGSV:TPP』のエンディングで、ヴェノムが「OPERATION INTRUDE N313」と書かれたカセットテープをMSX2(初代『メタルギア』が発売されたゲーム機)にセットするシーンは、彼の物語が初代『メタルギア』へと繋がっていくことを示唆しています。
アウターヘブン蜂起におけるヴェノム・スネークの最後の役割
1995年、本物のビッグ・ボスはFOXHOUNDの総司令官としてアメリカに籍を置きながら、影では武装要塞国家「アウターヘブン」を築き、世界への反乱(アウターヘブン蜂起)を企てます。
この時、アウターヘブンの現場指揮官として、世界の敵となったのがヴェノム・スネークでした。
本物のビッグ・ボスは、情報攪乱のためにFOXHOUNDの新人隊員ソリッド・スネークをアウターヘブンに派遣しますが、彼の想定を超える活躍により計画は阻止されます。
ヴェノム・スネークは、最後までビッグ・ボスのファントムとしての役割を貫き、ソリッド・スネークの前に立ちはだかり、激闘の末に命を落としました。
「お前はやりすぎた、やりすぎたのだ!」の名言が意味するもの
アウターヘブンの最深部でソリッド・スネークと対峙したビッグ・ボス(ヴェノム)は、「お前はやりすぎた、やりすぎたのだ!」という言葉を投げかけます。
これは、単なる新人兵士に過ぎなかったはずのソリッド・スネークが、自らの想定を遥かに超えて計画を破壊していくことへの驚愕と焦りを表したセリフです。
そして、この戦いで死んだと思われたビッグ・ボスでしたが、実は生きており、続編の『メタルギア2 ソリッドスネーク』で再びソリッドの前に現れます。
この一連の歴史の裏で、本物のビッグ・ボスは生き延び、ヴェノムがその身代わりとなっていたのです。
まとめ:エイハブ(ヴェノム)の物語がプレイヤーに問いかけるもの
あなたもまた「ビッグ・ボス」の一部であるというメタ的なメッセージ
ヴェノム・スネークの物語は、単なるゲームの登場人物の物語ではありません。
ゲーム開始時にプレイヤーが設定したアバターがメディックの本来の姿であるという演出は、「ヴェノム・スネークはプレイヤー自身である」という強烈なメタファーになっています。
「俺はお前であり、お前は俺だ」というビッグ・ボスの言葉は、ヴェノムだけでなく、シリーズをプレイし、彼の物語を体験してきたプレイヤーにも向けられたメッセージなのです。
我々プレイヤーもまた、ビッグ・ボスという伝説を形成する一部であることが示唆されています。
メタルギアサーガを未来へ語り継ぐ存在としてのプレイヤーの役割
『MGSV:TPP』は、小島秀夫監督が手掛けるメタルギアサーガの最終章とも言われています。
この物語は、ヴェノム・スネークを通じて、これまでのサーガの歴史をプレイヤーに追体験させると同時に、その物語を未来へ語り継いでいく役割を託しています。
ソリッド・スネークが雷電に歴史を伝える役目を託したように、ヴェノムというファントムを通じて、私たちプレイヤーもまた、この壮大な物語の語り部となるのです。
エイハブ、そしてヴェノム・スネークの悲劇的な生涯は、シリーズに込められた反戦・反核のメッセージと共に、私たちの心に深く刻み込まれました。
- エイハブの正体は主人公ヴェノム・スネークの仮初の名
- ヴェノムの本来の姿はMSFの優秀な衛生兵「メディック」
- 謎の男イシュメールは本物のビッグ・ボスその人
- エイハブとイシュメールの名は小説『白鯨』が元ネタ
- 物語の根幹には「復讐」というテーマが存在
- ヴェノムはゼロ少佐の「影武者計画」により生み出された
- 高い能力は元々の素質と昏睡中の記憶移植によるもの
- 初代『メタルギア』でソリッドに倒されたのはヴェノム
- 彼の存在はプレイヤー自身が物語を紡ぐメタファー
- ヴェノムの物語はメタルギアサーガを未来へ繋ぐ役割を担う
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