2012年にフリーゲームとして公開され、10年以上が経過した今もなお多くのファンに愛され続けているホラーアドベンチャーゲーム「Ib(イヴ)」。
美術館という独特の舞台設定、薔薇に込められた花言葉の意味、そして全7種のマルチエンディングに隠された真意など、考察の奥深さこそがこの作品最大の魅力といえるでしょう。
しかし、プレイを終えた後に「あの場面の意味は何だったのか」「解き明かされていない謎はまだあるのか」と気になっている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、Ibの基本情報からキャラクターの背景、全エンディングの分岐条件と意味、そして作中に散りばめられた伏線や謎について、あらゆる角度から考察していきます。
なお、本記事にはゲーム全編にわたる重大なネタバレが含まれますので、未プレイの方はご注意ください。
Ibとはどんなゲーム?基本情報と物語のあらすじ
Ibの考察を深めるうえで、まずはゲームの基本的な情報と物語の全体像を把握しておくことが欠かせません。
タイトルの読み方ひとつをとっても複数の解釈が存在し、それ自体が考察の入り口となっています。
Ibの意味とタイトルに込められた複数の解釈
タイトルの「Ib」は主人公の少女の名前であり、読みは「イヴ」です。
一般的に「イヴ」という名前であれば英語表記は「Eve」になるはずですが、本作では「Ib」というやや不自然な綴りが採用されています。
この点について、ファンの間ではいくつかの解釈が提唱されてきました。
もっとも有力な説のひとつが、「Isabelle(イザベル)」のようにIとbを含む名前の愛称として縮めたものだという考え方です。
また、「Ib」を英語読みで「アイビー」と読むと、植物のアイビーの花言葉は「友情」や「永遠の愛」を意味します。
作中でイヴとギャリーの間に芽生える絆を踏まえると、タイトル自体が物語のテーマを暗示しているとも読み取れるでしょう。
さらに、キリル文字を使用する言語圏では「B」が「V」の発音を持つことから、舞台となる国がロシアや東欧をモデルにしている可能性を指摘する声もあります。
たった二文字のタイトルに複数の意味が重ねられている点は、このゲームの奥深さを象徴しています。
何年前に公開された?フリー版からリメイク版までの歩み
Ibが最初にフリーゲームとして公開されたのは2012年2月27日のことです。
2026年現在から数えるとおよそ14年前にあたり、RPGツクール2000という当時としても古いツールで制作されました。
公開直後からニコニコ動画を中心にゲーム実況動画が急増し、口コミで爆発的に知名度が広がっています。
ベクターの2012年ダウンロード数年間総合ランキングでは第3位を記録し、ユーザー人気投票でもグランプリを獲得しました。
その後、2014年にはRPGツクール2000をインストールせずに起動できるv1.07が公開されています。
リメイク版の開発は2019年11月に着手され、2022年4月11日にSteam版が有料タイトルとしてリリースされました。
続いて2023年3月9日にNintendo Switch版、2024年3月14日にはPS4/PS5版が発売され、より多くのプレイヤーが遊べる環境が整いました。
| バージョン | 発売日 | プラットフォーム | 価格 |
|---|---|---|---|
| フリー版 | 2012年2月27日 | Windows(RPGツクール2000) | 無料 |
| v1.07 | 2014年6月17日 | Windows | 無料 |
| リメイク版 | 2022年4月11日 | Steam(Windows 10) | 有料 |
| Switch版 | 2023年3月9日 | Nintendo Switch | 1,500円〜 |
| PS4/PS5版 | 2024年3月14日 | PlayStation 4/5 | 有料 |
美術館に迷い込んだ少女イヴの物語を簡潔に紹介
物語の舞台は、芸術家ワイズ・ゲルテナの美術展が開催されている美術館です。
9歳の少女イヴは両親とともに美術館を訪れますが、館内を一人で見て回っているうちに、突然周囲から人がいなくなります。
床には「おいでよイヴ」という不気味な文字が現れ、イヴは巨大な絵画「絵空事の世界」を通じて、ゲルテナの作品たちが蠢く謎の異世界へと迷い込んでしまいます。
異世界ではイヴの命が一輪の赤い薔薇として具現化されており、花びらが散るとイヴも命を落とします。
やがてイヴは、同じく異世界に迷い込んだ青年ギャリーと出会い、二人で出口を探すことに。
中盤からは明るく人懐っこい少女メアリーが合流しますが、彼女には重大な秘密が隠されていました。
プレイヤーの選択と行動によって7つのエンディングに分岐し、全員が救われる結末もあれば、誰一人として幸せになれない結末も存在します。
登場キャラクターの正体と隠された背景を考察
Ibの物語を深く読み解くには、各キャラクターの背景や行動の動機を考察することが不可欠です。
公式に語られていない部分も多く、プレイヤーによって解釈が大きく分かれるのもこのゲームの醍醐味といえるでしょう。
主人公イヴはなぜ絵の世界に選ばれたのか
イヴが絵の世界に引き込まれた理由は、作中で明確には語られていません。
しかし、いくつかの手がかりから推測することは可能です。
まず、イヴが引き込まれる直前の美術館では、巨大な絵画の前の廊下だけが不自然に長く、周囲に人がいなくなるという異常が発生しています。
これは絵画の世界が特定の人物を「選んで」誘い込んでいる可能性を示唆しているでしょう。
メアリーの日記からも、異世界の美術品たちが外部の人間を誘い込もうとする習性を持っていることが読み取れます。
加えて、イヴの母親がゲルテナと身内レベルの面識があったことを示唆する描写が作中に存在します。
「悪意なき地獄」という作品の前でイヴの母親が語る内容から、ゲルテナ一家とイヴの家族には何らかのつながりがあった可能性が浮かび上がるのです。
もしゲルテナがイヴという少女の存在を知ったうえでメアリーを生み出したのだとすれば、イヴが絵の世界に選ばれたのは偶然ではなく、最初から仕組まれた運命だったのかもしれません。
ギャリーが「吊るされた男」を見つめていた理由とは
ゲーム冒頭、美術館の通常世界でギャリーは「吊るされた男」という絵画を至近距離で凝視しています。
他の来館者は作品から一歩引いて鑑賞しているのに対し、ギャリーだけが異様に近い距離で見入っているのです。
この描写から、多くのファンの間で「ギャリーには自殺願望があったのではないか」という考察が根強く語られてきました。
タロットカードにおける「吊るされた男」は「自己犠牲」を意味するカードです。
作中でギャリーがイヴのために自らの薔薇を差し出す展開と重ね合わせると、この絵画はギャリーの運命を予見していたともいえるでしょう。
また、青い人形の部屋でギャリーが口にする「うまくいかない」という台詞や、長袖で腕を隠している外見的特徴なども、内面に暗い感情を抱えていた根拠として指摘されています。
一方で、「美術館に来るのを楽しみにしていた」という発言や、イヴに薔薇を取り返してもらった際に安堵する姿など、自殺願望と矛盾する描写も少なくありません。
現在のファンコミュニティでは、「明確な自殺願望というよりも、孤独や生きづらさを内面に抱えていた人物」という穏当な解釈がもっとも支持されています。
メアリーの正体はゲルテナ最後の作品だった
物語中盤で明らかになるメアリーの正体は、芸術家ゲルテナが生涯最後に制作した絵画作品です。
ゲルテナの世界に存在する全作品の「妹」にあたる存在であり、他の美術品たちと会話できるのも絵画としての特性によるものです。
メアリーが持つ黄色い薔薇は造花であり、人間のように命を持っていないことの象徴でもあります。
黄色い薔薇の花言葉は「嫉妬」「薄れゆく愛情」であると同時に「友情」の意味も含んでおり、メアリーの複雑な感情を的確に映し出しています。
ゲルテナを「お父さん」、赤い服の女を「お姉ちゃん」と呼ぶメアリーの言動からは、絵画でありながら人間のような家族への渇望が感じ取れるでしょう。
メアリーの絵画には他のゲルテナ作品と異なり制作年号が記載されていないという特異な点があり、この事実もファンの間で長年議論されてきました。
「メアリーはゲルテナの実在した孫がモデルではないか」という説や、「ゲルテナ幼少期の自画像説」など、正体に関する考察は多岐にわたります。
名前の由来についても、二次創作用語で「完璧すぎるオリジナルキャラクター」を意味する「メアリー・スー(Mary Sue)」との関連が指摘されており、絵画の世界においては何でもできる存在である点と符合するのが興味深いところです。
芸術家ゲルテナとは何者か?作中の手がかりを読み解く
ワイズ・ゲルテナ(Weiss Guertena)は本作の物語を支える最重要人物でありながら、ゲーム開始時点ですでに故人であり、直接姿を見せることはありません。
作中の資料によれば、ゲルテナは絵画や彫刻など多くの作品を残した芸術家ですが、比較的マイナーな存在で小さな美術館でしか個展を開くことができませんでした。
自画像を残さず、実在の人物を描くこともほぼなかったという異例の制作方針を貫いた人物です。
一方で、ある程度の財は築いていたようで、財産目当てで近づいてきた人物もいたことが「赤い服の女」の作品解説で語られています。
ゲルテナの綴りは公式コピーライトから「Guertena」と確定しており、ドイツ系や北欧系の名前である可能性が指摘されています。
最大の謎は、ゲルテナがどのようにして作品に「命」を与えたのかという点でしょう。
作中では「作品に魂を分け与えようと没頭した」という記述があり、メアリーをはじめとする作品たちが自律的に動く原因はゲルテナ自身の執念にあるのかもしれません。
全7種エンディングの分岐条件と意味を徹底解説
Ibの物語は、プレイヤーの行動や選択によって7つの異なる結末を迎えます。
どのエンディングにも深い意味が込められており、すべてを見ることで初めて物語の全体像が浮かび上がる構造になっています。
トゥルーエンド「再会の約束」に到達するための条件
全7種のエンディングの中で唯一スタッフロールが流れるトゥルーエンドが「再会の約束」です。
このエンディングに到達するためには、ゲーム全編を通じてギャリーの好感度を高く保つ必要があります。
具体的には、ゲルテナの作品を不必要に壊さないこと、ギャリーに対して好意的な選択肢を選び続けることが求められます。
さらに、メアリーの絵画を燃やした際にガラスの破片で怪我をしたギャリーにレースのハンカチを渡すことが最終的な分岐条件です。
現実世界に戻ったイヴとギャリーは美術館内で再会を果たしますが、ゲルテナの世界での記憶は失われています。
しかし、ギャリーのポケットに残っていた「Ib」の刺繍が入ったハンカチの血痕、そしてレモン味のキャンディをきっかけに、二人は失われた記憶を取り戻すのです。
ギャリーは血のついたハンカチを洗濯して返すことを約束し、二人は再会の約束を交わして別れます。
もっとも達成が難しいエンディングでありながら、唯一希望に満ちた結末であることが、多くのプレイヤーの心を掴んでいる理由でしょう。
「いつまでも一緒」と「忘れられた肖像」が示す残酷な結末
ギャリーの薔薇がメアリーに奪われてしまうルートでは、「いつまでも一緒」と「忘れられた肖像」という二つのエンディングに分岐します。
「いつまでも一緒」は、メアリーの絵画を燃やさずにゲルテナの世界を脱出した場合に到達するエンディングです。
現実世界に戻ったイヴの前には、両親とまるで以前からの家族のように接するメアリーの姿があります。
両親の記憶は改竄されており、メアリーをイヴの姉妹として受け入れています。
イヴのポケットにはギャリーからもらったキャンディかライターが残っていますが、メアリーに取り上げられてしまい、ギャリーの痕跡は完全に消滅するのです。
メアリーにとっては念願の外の世界で暮らせるハッピーエンドですが、ギャリーの犠牲のうえに成り立つ結末であり、実質的にはバッドエンドとして位置づけられています。
一方の「忘れられた肖像」は、ギャリーの死後にメアリーの絵画を燃やしてイヴが一人で脱出するエンディングです。
現実世界に戻ったイヴが美術館を歩いていると、かつてギャリーが見ていた「吊るされた男」があった場所に、ギャリーによく似た男性を描いた「忘れられた肖像」という絵画が飾られています。
イヴは一瞬立ち止まるものの、ギャリーを思い出すことはなくそのまま通り過ぎてしまいます。
ギャリーがゲルテナの作品として永遠に美術館に閉じ込められたことを示唆する、静かで胸を締めつけられるエンディングです。
「ようこそゲルテナの世界へ」はバッドエンドなのか
「ようこそゲルテナの世界へ」は、分類上はバッドエンドに位置づけられていますが、プレイヤーの間では解釈が大きく分かれるエンディングです。
このエンディングに到達する条件は、ギャリーの死亡率を高めた状態で青い人形の部屋からの脱出に失敗し、かつメアリーの好感度が高い場合です。
ギャリーは精神崩壊を起こし、イヴも力尽きて動けなくなってしまいます。
外の世界を夢見ていたメアリーは一度部屋を出ようとしますが、初めてできた友達であるイヴとギャリーを見捨てることができず、二人のもとに戻ってきます。
そして三人はゲルテナの世界で永遠に暮らし続けることを選ぶのです。
よく見ると、動かなくなった二人の薔薇はまだ散っておらず、部屋には回復用の花瓶も置かれています。
「三人が一緒にいられる」という点では救いがあるようにも見えますが、狂気に満ちた異世界で正気を保てるとは考えにくく、真の意味で幸せな結末とは言い難いでしょう。
メアリーが友情のために外の世界を諦めるという選択は、彼女の人間らしさを描いた唯一のエンディングでもあり、だからこそ多くのプレイヤーの胸に残る結末となっています。
メアリーを操作できる唯一のエンド「ある絵画の末路」の意味
「ある絵画の末路」は、本編で操作することができないメアリーを唯一プレイヤーが直接動かせる特別なエンディングです。
発生条件は「ようこそゲルテナの世界へ」と同様ですが、メアリーの好感度が低い場合に到達します。
精神崩壊したギャリーと動けなくなったイヴを見捨て、メアリーは一人でゲルテナの世界からの脱出を試みます。
しかし、虚構の産物である絵画が外に出るためのルール、すなわち「現実世界の誰かと入れ替わる」という条件を無視して脱出を強行したため、ペナルティが課されるのです。
メアリーがたどり着いたのは現実世界でもゲルテナの世界でもない、暗闇に包まれた誰もいない美術館でした。
完全な孤独の中でメアリーは泣き崩れ、画面は暗転します。
誰一人として救われない、文字通り最も救いのないエンディングです。
このエンディングは、メアリーの視点から「絵画が人間の世界に出ることの不可能性」を突きつける構造になっており、Ibという作品全体のテーマを凝縮した結末ともいえるでしょう。
薔薇・花言葉・心壊──作中に散りばめられた謎を考察
Ibの世界には、エンディングの分岐だけでは説明しきれない多くの謎と伏線が散りばめられています。
薔薇の色に込められた花言葉から、イヴの精神状態を示す「心壊」の正体まで、考察の余地は尽きません。
赤・青・黄の薔薇に込められた花言葉の意味
作中で各キャラクターの命を象徴する薔薇には、それぞれ異なる色が割り当てられており、花言葉が物語のテーマと深く結びついています。
イヴの赤い薔薇の花言葉は「愛情」です。
物語を通じてイヴが周囲の人物に向ける純粋な思いやりと重なり合い、赤い薔薇はイヴという少女の本質をそのまま表しています。
ギャリーの青い薔薇の花言葉は「不可能」そして「奇跡」です。
青い薔薇は自然界には存在せず、品種改良でようやく誕生したことから、もともとは「不可能」の花言葉しかありませんでした。
しかし開発の成功により「奇跡」が追加されたという経緯は、ギャリーの運命そのものを暗示しているかのようです。
通常では不可能な結末が、プレイヤーの選択次第で「奇跡」として実現する構造は、まさに青い薔薇の花言葉と一致しています。
メアリーの黄色い薔薇は「嫉妬」「薄れゆく愛情」、そして「友情」を意味します。
イヴとギャリーの関係への嫉妬、外の世界への執着、しかし同時にイヴに向ける友情という、メアリーの複雑な感情がひとつの花に凝縮されているのです。
メアリーの花占いは最初から仕組まれていた?
ギャリーの薔薇を奪ったメアリーが行う花占いは、作中でも特に不気味な場面のひとつです。
花占いは「好き」「嫌い」を交互に数えていくものですが、ギャリーの青い薔薇の花びらは10枚であるため、「好き」から始めると結果は「嫌い」で終わります。
メアリー自身が作中で「仮に嫌いで花弁がなくなっても茎まで数えれば必ず好きで終われる」と語っている点は見逃せません。
つまり、メアリーの花占いは最初から結果が決まっていた出来レースだった可能性が高いのです。
花びらを一枚ずつむしるという行為自体がギャリーの命を削る攻撃でもあり、「好き」という言葉で友情を装いながら命を奪うという二重の残酷さが込められています。
なお、花びらの枚数がそのままHPと一致するかについては長年議論が続いており、ギャリーの薔薇が散った場面では13枚の花びらが描かれていたことから、「HP=花びらの枚数」ではないとする見方が一般的です。
イヴの「心壊」はいつから始まっていたのか
「心壊」とは、極度の精神的疲弊により幻覚が見えるようになり、最終的に心が壊れてしまう現象です。
本人はそれに対して無自覚であるという特性が、この現象をいっそう恐ろしいものにしています。
イヴの心壊がもっとも顕著に表れるのは、青い人形がウサギに見える場面です。
公式情報でイヴはウサギが好きだと明かされており、精神的に追い詰められた結果、恐ろしいものが好きなものに置き換わって見えるようになったと考えられています。
では、心壊はいつ始まったのでしょうか。
イヴが「ふたり」という絵画を見て自分の両親だと認識した場面が、有力な起点のひとつとして挙げられています。
この場面でギャリーは「この子も相当参ってるわね」と発言しており、イヴの精神状態がすでに不安定になっていたことを示しています。
「決別」の絵画のイベント付近でギャリーが「精神的にキツイ」と述べていることから、このあたりで精神的疲労がピークに達したとする見方も有力です。
重要なのは、プレイヤーもイヴと同じ視点で世界を見ているため、幻覚に気づけないまま物語が進行するという構造です。
ギャリーと合流して初めて「見えているものが違う」と判明するこの演出は、ホラーゲームとして秀逸な仕掛けといえるでしょう。
三人での脱出が不可能とされる理由
多くのプレイヤーが望んだであろう「イヴ・ギャリー・メアリーの三人全員での脱出」は、ゲーム内のルール上実現しないように設計されています。
作中に登場する書物「万物の交換」には、ゲルテナの世界と現実世界の間には等価交換の法則が存在することが記されています。
メアリーが外の世界に出るためには、現実世界の誰かを身代わりとしてゲルテナの世界に残さなければなりません。
少なくともメアリー自身はこのルールを明確に認識しており、だからこそイヴかギャリーのどちらかを犠牲にしようと画策するのです。
「ある絵画の末路」のエンディングでは、この条件を無視して脱出を試みたメアリーが罰を受けることからも、等価交換のルールが絶対的なものであることが裏付けられています。
「ようこそゲルテナの世界へ」では三人が一緒にいることは可能ですが、全員がゲルテナの世界に残るという形であり、現実世界への脱出は果たされていません。
三人全員の幸せな脱出という結末が存在しないことこそが、Ibという作品の切なさの核心部分なのです。
リメイク版で変わった点と変わらなかった点
2022年にリリースされたリメイク版は、グラフィックや操作性において大きな進化を遂げましたが、物語の根幹に関わる部分はあえて据え置かれています。
その判断の裏にある制作者の意図も、考察を深めるうえで押さえておきたいポイントです。
グラフィック刷新や会話システムなど主な変更点
リメイク版におけるもっとも大きな変化は、グラフィックの全面刷新です。
画面解像度が大幅に向上し、マップ、キャラクター、スチルなどほぼすべてのビジュアルが一から描き直されました。
美術品のデザインも一部変更され、新たな美術品も追加されています。
操作面では会話システムとズームモードが新たに導入され、キャラクター同士の掛け合いをより細かく楽しめるようになりました。
扉の種類が視覚的に区別できるようになるなど、操作ガイドも強化されています。
ギャリーの薔薇のHP最大値がフリー版の10枚からリメイク版では7枚に変更されており、ゲームバランスの調整も施されました。
演出面では新規の演出が追加されている箇所があり、フリー版をプレイ済みのファンにも新鮮な体験が提供されています。
作者がエンディング追加をあえて行わなかった理由
リメイク版でファンがもっとも期待していた要素のひとつが、新エンディングの追加だったと言われています。
しかし、作者のkouri氏はインタビューの中で「物語の大きな改変やエンディングの安易な追加は蛇足になる」と明言しました。
リメイク作品には新しい要素が期待されることは理解しつつも、オリジナルの物語が持つ完成度を損なうリスクを避けたのです。
この判断は、Ibという作品が10年以上にわたって考察され続けてきた歴史を尊重するものでもあります。
エンディング数が7つのまま据え置かれたことで、フリー版時代から積み上げられてきたファンの考察や解釈が無効化されずに済んだともいえるでしょう。
物語に手を加えず、表現力だけを現代水準に引き上げるという方針は、リメイク作品のひとつの理想形として高く評価されています。
今なお愛され続けるIbの世界──イベントと影響
公開から14年が経過しても、Ibの世界は現実空間にまで広がり続けています。
リアルイベントの盛況ぶりや後続作品への影響は、この作品がいかに多くの人の心に残り続けているかを物語っています。
ゲルテナ展や謎解きミュージアムなどリアルイベントの盛況
Nintendo Switch版の発売を記念して2023年3月に渋谷PARCOで開催された「ゲルテナ展」は、前売りチケットが販売開始からわずか約1時間で完売するという驚異的な人気を見せました。
kouri氏監修のもと、作中の絵画がゲーム内のサイズを忠実に再現する形で現実に展示され、ファンの間で大きな話題となっています。
名古屋PARCO、心斎橋PARCOへの巡回展も実施され、いずれも高い集客を記録しました。
2023年9月には東京ドームシティのGallery AaMoで没入体感型謎解きイベント「Ib謎解きミュージアム」が初開催されています。
このイベントは好評を博し、2025年2月8日から3月9日にかけて完全新規の謎解きを追加した東京凱旋展が開催されました。
2024年1月には東京・大阪でコラボカフェも展開され、作中の美術品をモチーフにしたドリンクメニューが提供されるなど、ゲームの枠を超えた展開が続いています。
公式グッズ通販サイト「ゲルテナショップ」も継続的に運営されており、2026年1月には新春初売り祭が開催されるなど、コンテンツとしての勢いは衰えを見せていません。
後続のホラーゲームに与えた影響と作品の立ち位置
Ibは2010年代のフリーホラーゲームブームを牽引した中心作品のひとつとして、ゲーム史に確固たる位置を占めています。
同時期に流行した「魔女の家」や「青鬼」とともに、RPGツクール製フリーホラーゲームの黄金期を築き上げました。
Ibの特徴である「美術館という閉鎖空間での探索」「命を象徴するアイテムの存在」「マルチエンディングによる考察の深さ」といった要素は、後続の多くのインディーゲームに影響を与えています。
2025年12月に日本語対応した「NeverHome – Hall of Apathy」や、2025年11月にSteamで発売された「Alice’s World」など、Ibに影響を受けたことを公言する作品は現在も登場し続けています。
ニコニコ動画を中心としたゲーム実況文化との相乗効果で爆発的に広まったという経緯は、個人制作のフリーゲームがメジャータイトルに匹敵する知名度を獲得できることを証明した先駆的な事例でもありました。
pixivには公開当時の時点で2万点を超えるファンイラストが投稿されており、二次創作文化との親和性の高さも、Ibが長く愛される要因のひとつといえるでしょう。
まとめ:Ibゲーム考察で読み解く全エンディングの意味と謎
- Ibは2012年公開のRPGツクール2000製フリーホラーゲームで、14年前の作品でありながら今も根強い人気を持つ
- タイトル「Ib」には愛称説やアイビーの花言葉説など複数の意味が込められている
- 赤・青・黄の薔薇はそれぞれ愛情・不可能と奇跡・嫉妬と友情の花言葉を持ち、キャラクターの本質を象徴する
- メアリーの正体はゲルテナ生涯最後の絵画作品であり、外の世界に出るには人間との入れ替わりが必要である
- ギャリーが「吊るされた男」を凝視していた理由は、自己犠牲の暗示や内面の孤独を示す伏線と考察されている
- トゥルーエンド「再会の約束」はギャリーの好感度とハンカチの受け渡しが条件となる唯一の希望ある結末である
- 「ようこそゲルテナの世界へ」はバッドエンドに分類されるが、メアリーの友情が描かれた特異なエンディングでもある
- イヴの心壊は両親の絵画を見た場面あたりから始まっていたと推測され、プレイヤーも幻覚に気づけない構造になっている
- リメイク版ではグラフィックと操作性が大幅に向上した一方、物語やエンディング数はあえて変更されていない
- ゲルテナ展や謎解きミュージアムなどリアルイベントが継続的に開催され、Ibの世界は現実空間にも広がり続けている

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