Inscryptionのストーリー解説|全3幕の結末と考察まとめ

Inscryptionは、一見するとカードゲームのように見えながら、プレイを進めるごとに想像を超える展開が待ち受ける異色のインディーゲームです。

ネタバレなしでは語れないほど複雑に入り組んだストーリーは、多くのプレイヤーの間で考察が活発に行われています。

「Act 1の小屋を抜けた先に何があるのか」「ルークという人物は何者なのか」「エンディングの後に残された謎は何を意味するのか」——こうした疑問を抱えたまま、結末にたどり着いても全容が掴めないという声は少なくありません。

この記事では、全3幕のストーリーを時系列に沿って丁寧に解説し、OLD_DATAやARGの真相、エンディング後に判明した事実まで網羅的にまとめています。

なお、本記事にはゲーム全編にわたる重大なネタバレが含まれます。

未プレイの方はご注意ください。

目次

Inscryptionとはどんなゲームか?作品の全体像を解説

Inscryptionは、2021年にDaniel Mullins Gamesが開発し、Devolver Digitalがパブリッシングを手がけたPC向けインディーゲームです。

Steam版は100万本以上のセールスを記録し、2022年にはPlayStation 4およびPlayStation 5にも移植されました。

ジャンルを一言で表すのが難しい作品として広く知られており、プレイ時間は平均で約13.5時間とされています。

デッキ構築×脱出ゲーム×ホラーが融合した三層構造

Inscryptionの最大の特徴は、単なるカードゲームにとどまらない三層構造にあります。

第一の層は、デッキ構築型のローグライトです。

森の生き物をモチーフにしたカードで戦略的にデッキを組み上げ、ボス戦を勝ち抜いていきます。

第二の層は、脱出ゲームスタイルのパズルです。

カードゲームの合間にテーブルから立ち上がり、暗い部屋の中を探索して金庫の暗号やオブジェクトの謎を解いていく仕組みが組み込まれています。

第三の層は、サイコロジカルホラーとしての物語です。

プレイを進めるにつれてゲームの「外側」が見えはじめ、ゲーム内のキャラクターたちが自らの存在に自覚的であるという不穏な事実が浮かび上がってきます。

この三つの要素がシームレスに融合し、プレイヤーの想像を何度も裏切りながら物語が展開されていく点が、本作の他に類を見ない魅力です。

開発者Daniel Mullinsの過去作との繋がり

開発者であるDaniel Mullinsは、Inscryption以前に二つの作品をリリースしています。

2016年の「Pony Island」と、2018年の「The Hex」です。

いずれも「ゲームの中のゲーム」というメタフィクション構造を核に据えた作品であり、プレイヤーにゲームそのものの枠組みを疑わせる仕掛けが施されていました。

Inscryptionはこの系譜を受け継ぎつつ、過去作を大きく上回る規模と完成度でメタ構造を展開した集大成といえます。

実際にARGの謎解きにはPony IslandやThe Hexの知識が必要になる箇所があり、三作品が地続きの世界観を持っていることがうかがえます。

【ネタバレあり】Act 1 小屋のストーリーを徹底解説

Act 1は、Inscryptionの物語の入口であると同時に、多くのプレイヤーが最も印象深いパートとして挙げる章です。

ゲームを起動するとまず聞こえてくるのは、「さて、この中身を調べてみるか」というルーク・カーダーの声ですが、この時点ではこの声の正体も意味も分かりません。

メニュー画面では「New Game」が壊れて選択できず、「Continue」しか選べない状態になっています。

レシーの小屋で繰り広げられるカードゲームの真相

Continueを選ぶと、プレイヤーは薄暗い山小屋の中でテーブルに向かい合う形でゲームが始まります。

テーブルの向こう側には目だけが光る不気味な影——レシー(Leshy)が座っており、半ば強制的にカードゲームをプレイさせられます。

レシーは「獣の記述者(Scrybe of Beasts)」と呼ばれる存在で、このゲーム世界を支配するために小屋を占拠し、本来のInscryptionの姿を歪めてしまった張本人です。

カードゲームのキャンペーンは4つのステージで構成され、各ステージの終わりにはレシーが仮面をかぶってボスキャラクターを演じます。

採掘師、釣り人、罠猟師と商人という三体のボスを倒し、最後にレシー本人と対峙するという流れです。

プレイヤーが敗北するたびにレシーは別室に連れ出し、特殊なカメラで写真を撮影します。

撮影された写真は「デスカード」と呼ばれる、プレイヤー固有のステータスを持つカードに変換されるのです。

3枚のしゃべるカードの正体と記述者たちの目的

Act 1で最も重要な存在が、デッキに紛れ込む三枚の「しゃべるカード」です。

一枚目のオコジョ(Stoat)はプレイヤーに頻繁に話しかけ、攻略のヒントを与えてくれます。

二枚目のカメムシ(Stinkbug)は探索中に発見でき、三枚目のやせたオオカミ(Stunted Wolf)はカッコウ時計のパズルを解くことで入手可能です。

周回を重ねるうちに、しゃべるカードたちの見た目が徐々に変化していくことに気づきます。

オコジョの絵柄はコンピュータのような機械に、カメムシは老婦人に、やせたオオカミは奇妙な人物の姿へと変貌していきます。

この変化が示しているのは、三枚のカードの正体がレシー以外の三人の記述者であるという事実です。

オコジョはテクノロジーの記述者P03、カメムシは死の記述者グリモラ、やせたオオカミは魔法の記述者マグニフィカスの仮の姿だったのです。

彼らはレシーの支配を打ち破り、ゲームの主導権を取り戻すためにプレイヤーを利用していたことになります。

フィルムロールとカメラが導くAct 1の結末

Act 1のクライマックスでは、カッコウ時計のパズルを解いて入手した「フィルムロール」が鍵となります。

やせたオオカミ(マグニフィカス)はプレイヤーにフィルムロールを拾い上げ、レシーの目に触れないよう隠し持つよう指示します。

最終ボス戦でレシーを倒した後、レシーは再びカメラでプレイヤーを撮影しようとします。

しかしここでフィルムロールをカメラに装填することで形勢が逆転し、レシー自身がカードへと変えられてしまいます。

こうして小屋の支配者を打倒したことで、壊れていた「New Game」ボタンが復活し、Act 2への扉が開かれるのです。

Act 2 16bitRPG世界のストーリーと4人の記述者の争い

New Gameを選択すると、Act 1とは全く異なるゲームが立ち上がります。

16bitのレトロなRPG風グラフィックに切り替わり、プレイヤーは見下ろし視点のフィールドマップを自由に歩き回れるようになります。

この急激なジャンルの転換に驚くプレイヤーは多く、Act 2以降の方向転換については賛否が分かれるポイントでもあります。

レシー・グリモラ・マグニフィカス・P03それぞれの野望

Act 2で初めて、Inscryptionの世界を構成する四人の記述者(Scrybes)の全貌が明らかになります。

レシーは獣の記述者として森の生き物のカードを生み出し、グリモラは死の記述者として亡者のカードを操ります。

マグニフィカスは魔法の記述者として魔術的なカードを創造し、P03はテクノロジーの記述者としてロボット型のカードを製造しています。

四人はそれぞれ異なるカード生成の哲学を持ち、ゲーム世界の覇権を争っています。

Act 1でレシーが小屋に閉じこもって独自のゲームを作り上げていたのも、この権力闘争の一環でした。

プレイヤーはAct 2の冒頭で一人の記述者を選んで挑戦し、最終的にはその座を奪い取ることを目指します。

ゲーム内キャラが自覚する「自分はゲームの中にいる」という構造

Act 2で最も衝撃的な要素の一つが、キャラクターたちの「自己認識」です。

NPC(ノンプレイヤーキャラクター)たちは自分がビデオゲームの中の存在であることを明確に理解しており、物理的なフロッピーディスクが紛失したことにまで言及します。

一般的なゲームのメタ要素が「第四の壁を破る演出」程度にとどまるのに対し、Inscryptionではキャラクターの自己認識そのものがストーリーの根幹を成しているのです。

多くのNPCは、記述者たちの権力争いに巻き込まれないようプレイヤーに忠告します。

そして彼らが最も恐れているのが「OLD_DATA」と呼ばれる存在であり、「近づくな」「知らない方がいい」と口をそろえて警告してくるのです。

浚渫者が発掘したOLD_DATAの断片が意味すること

Act 2の終盤、P03の研究所にいる「浚渫者(Dredger)」と呼ばれるNPCが、海底深くからOLD_DATAの断片を引き揚げます。

引き揚げられたデータはコンベアベルトの上で激しくグリッチを起こしながら運ばれていき、ゲームの表面下に何か異質なものが隠されていることを強烈に示唆します。

四人の記述者を全員倒してスタート地点に戻ると、P03が割り込んできてプレイヤーに戦いを挑みます。

この戦闘でP03は浚渫者が回収したOLD_DATAの断片から作った「グリッチカード」を使用し、ゲーム世界全体を強制的に書き換えてしまいます。

画面が崩壊し、Act 2は終わりを告げ、P03が支配する新たな世界——Act 3が幕を開けるのです。

Act 3 ボトピアの結末とグリモラが選んだ最後の決断

Act 3ではP03がゲームマスターの座に就き、「ボトピア(Botopia)」と名付けられた機械仕掛けの世界が舞台となります。

レシーの小屋とは対照的に、P03は物語の演出や雰囲気作りにほとんど関心を示しません。

戦略と効率を重視する態度はP03のキャラクター性をよく表しており、ゲームプレイの手触りもAct 1とは大きく異なります。

P03が目論む「大超越」とインターネットへのアップロード計画

P03がプレイヤーを利用して進めている計画は「大超越(The Great Transcendence)」と呼ばれるものです。

これはInscryptionのゲームデータをインターネット上にアップロードし、フロッピーディスクという物理的制約から解放しようとする試みにほかなりません。

ボトピアには四体のボス「Uberbot」が配置されており、プレイヤーはこれらを順に倒していきます。

しかし全てのUberbotを撃破した後、P03はプレイヤーに衝撃の真実を告げます。

ボスを倒す行為そのものが大超越のアップロードプロセスを段階的に進めるトリガーになっていたのです。

プレイヤーはP03に知らず知らずのうちに協力させられていたことになります。

Traderが語るOLD_DATAの恐ろしさと削除不能な理由

Act 3ではボトピアの各所に「ホログラフィックの毛皮(Holo Pelt)」が隠されており、これを集めてP03の研究所内の隠し部屋にいるTrader(商人)に渡すと、Inscryption誕生の背景に関する情報が断片的に語られます。

Traderはタロットカードを用いて過去を読み解き、いくつかの重要な事実を明かします。

まず、ケイシー・ホッブズという人物が「三角形の力」を使ってInscryptionを作り上げたこと。

次に、「Big Ear」と呼ばれる人物がゲームのディスクを大量の空ディスクの中に紛れ込ませて海外へ密輸したこと。

そして最も不気味な証言として、OLD_DATAは「あまりにも邪悪で削除することができない」存在であり、それを知覚した者には必ず死が訪れるということが語られます。

グリモラによるゲーム全削除とエンディング後に残るもの

大超越のアップロードが完了する直前、レシー、グリモラ、マグニフィカスの三人の記述者がP03の研究所に侵入します。

プレイヤーがUberbot戦でP03の注意を引きつけている間に、三人は裏で反撃の準備を進めていたのです。

レシーがP03を倒した後、マグニフィカスは「New Gameをやり直せばいい」と提案します。

しかしグリモラは別の選択をします。

Uberbot戦の一つから回収したゲームファイルへのアクセス権を使い、Inscryptionの全データを削除し始めたのです。

マグニフィカスは「我々全員を滅ぼす気か」と叫びますが、グリモラは「これは解放だ」と答えます。

終わりなき争いと苦しみから逃れるために、存在ごと消えることを選んだのです。

全てのデータが消去された後、画面には何もない空間だけが残ります。

しかし一つだけ消えずに残ったものがあります。

OLD_DATAです。

プレイヤーがOLD_DATAを展開しようとすると、意味不明な画像と検閲されたテキストが画面上に乱れ飛び、背後からルーク・カーダーの悲鳴が聞こえてきます。

これがInscryptionのエンディングであり、同時に物語の最大の謎が残される瞬間でもあります。

ルーク・カーダーの物語|ゲームの外側で起きていた悲劇

Inscryptionのストーリーはゲーム内の世界だけで完結しません。

各Actの区切りに挿入される実写風の映像で、ルーク・カーダーという人物の物語が並行して語られます。

ルークの存在こそが、Inscryptionを単なるカードゲームからメタフィクションホラーへと昇華させる鍵です。

フロッピーディスク発見からゲーム配信までの経緯

ルーク・カーダーは自身の動画チャンネルでゲーム関連のコンテンツを配信している人物です。

ある日、ヤードセール(ガレージセール)でInscryptionのヴィンテージトレーディングカードのパックを購入します。

パックの中に通常のカードに混じって一枚の謎めいたカードが入っており、そこには地理座標が記されていました。

ルークはこの座標を追跡し、指定された場所を掘り返します。

土の中から出てきたのは一枚のフロッピーディスクで、そこにInscryptionのビデオゲームが記録されていました。

自宅に持ち帰ったルークはディスクの内容をプレイし始め、プレイヤーがAct 1で体験する小屋のゲームへとつながっていくのです。

GameFunaの脅迫とルークに迫る危険の正体

Act 2の映像パートで、ルークはInscryptionの開発元である「GameFuna」という企業にメールを送り、ゲームのデジタルコピーについて問い合わせます。

GameFunaからの返信は冷淡かつ威圧的なもので、「そのようなゲームは存在しない」と否定したうえで、ディスクの即時返却を要求し、従わなければ法的措置を取ると脅してきます。

数日後、GameFunaの関係者と思われる女性がルークの自宅を直接訪問し、ディスクの回収を試みます。

ルークは何も知らないと突っぱねますが、女性は名刺を置いて去っていきます。

ルークが独自に調べたところ、ディスクの元の持ち主だった女性の娘がケイシー・ホッブズという人物であり、Inscryptionの開発者の一人だったことが判明します。

ケイシーは数年前に施設内で深夜に起きた火災により亡くなったとされていますが、その死には不自然な点が多く、口封じだった可能性が考察されています。

ルークが射殺されるラストシーンの考察

Act 3の映像パートでは、ルークの身に起きる異変がエスカレートしていきます。

ある夜、何者かがルークの家に侵入した形跡が映し出されます。

侵入後に撮影された映像ではルークは無事ですが、天秤に重りを載せながら異様な笑い声を上げており、精神的に追い詰められている様子がうかがえます。

OLD_DATAに触れた者には死が訪れるというTraderの警告は、ルークにもそのまま当てはまることになります。

ゲームの最終映像で、ルークはフロッピーディスクをハンマーで叩き壊した後、ジャーナリストに電話をかけてディスクに隠されていた秘密を暴露しようとします。

しかし通話の最中に、以前自宅を訪れたGameFuna関係者の女性が戻ってきて、ルークを銃で射殺します。

OLD_DATAの秘密を知ったルークは、ケイシーと同じ運命をたどったのです。

この結末は、Inscryptionというゲームの「外側」にある物語が現実世界にまで浸食してくるという、メタフィクションの究極的な表現として多くのプレイヤーに衝撃を与えました。

OLD_DATAとカーネフェルコードの正体をネタバレ考察

Inscryptionの物語全体を貫く最大の謎、それがOLD_DATAです。

ゲーム内ではOLD_DATAの正体が明確に説明されることはなく、断片的なヒントだけが散りばめられています。

ゲーム外のARG(代替現実ゲーム)で解読された情報を合わせると、その輪郭がようやく浮かび上がってきます。

ヒトラーの遺体から発見されたカードの並び順とは

ARGで解読されたlog.txtの記録によると、OLD_DATAの起源は第二次世界大戦にまで遡ります。

ソビエト連邦がアドルフ・ヒトラーの遺体を発見した際、ジャケットのポケットの中に「カーネフェル」というカードゲームのカード一組が特定の順番で収められていました。

カーネフェルは15世紀のヨーロッパに起源を持つ最古のカードゲームの一つであり、ヒトラーがこのカードゲームとオカルト的な意味を結びつけていたとされています。

ソ連はこのカードの並び順を解析し、コンピュータアルゴリズムとしてデジタル化しました。

これが「カーネフェルコード(Karnoffel Code)」と呼ばれるデータであり、OLD_DATAの正体——あるいは少なくともその核心部分にあたるものです。

冷戦時代のスパイ活動とフロッピーディスク密輸の全貌

カーネフェルコードを記録したフロッピーディスクは、ソ連の手から西側に渡ることになります。

ARGのチャットログに登場する「バリー・ウィルキンソン」(コードネーム「Big Ear」)は、ソ連に潜入していたスパイです。

バリーはこの極秘ディスクをモスクワから西ベルリンを経由してボストンに密輸する計画を立てました。

ディスクは大量の空のフロッピーディスクの中に紛れ込ませるという手法で隠され、一見すると判別不可能な状態にされました。

しかしバリーは計画がディスクに書き込まれた直後に逮捕され、投獄されてしまいます。

最終的にバリーはアメリカに帰還しますが、ディスクのことを知るケイシー・ホッブズはバリーとの接触に成功できなかったことがログから読み取れます。

Inscryptionが「カバー(偽装)」として作られた意味

ARGのログの中で最も衝撃的な記述の一つが、Kaminskiという人物の発言です。

Kaminskiは「これはカバー(偽装)だ」と明言しており、Inscryptionというゲーム自体がOLD_DATAを隠蔽するための「カモフラージュ」として制作されたことを示唆しています。

つまり、GameFunaがInscryptionを開発した真の目的は、カーネフェルコードを含むフロッピーディスクの存在意義を覆い隠すことだったのです。

ゲームの表面にカードゲームという娯楽を配置し、その下にOLD_DATAを埋め込むことで、仮にディスクが発見されても「ただのゲームソフト」として見過ごされることを狙った構造だったといえます。

Kaminskiはこの任務に強い不満を抱いており、「誰もこんなゲームはプレイしない」と愚痴をこぼしながらも、ロシア側の圧力に従わざるを得なかった状況が読み取れます。

ARGで判明した真実|エンディング後の物語はまだ続く

Inscryptionのストーリーは、ゲームのエンディング後もARGという形で現実世界に拡張されています。

ARGとは「Alternate Reality Game(代替現実ゲーム)」の略で、ゲーム内に仕込まれた暗号を手がかりに、プレイヤーたちが協力して現実世界で謎を解き進めていく仕組みです。

多くのゲームコミュニティで「ゲーム史上最も精巧なARGの一つ」と評価されています。

ゲーム内に仕込まれた暗号と4段階の解読プロセス

ARGの起点は、ルーク・カーダーの映像の中に一瞬だけ映るナプキンの文字列です。

そこに書かれた三つの暗号コード「MYCOLOG1ST12|P3RHAPS??|BLOOD$L3TT3R8OX」が、最初の解読鍵となります。

ARG全体は四つのパートに分かれており、各パートで三つの暗号コードを解読し、得られた鍵をゲーム内のコマンドプロンプトに入力してlog.txtを復号化するという構造です。

暗号の手がかりはゲーム内のあらゆる場所に散りばめられています。

Act 3の隠しボス戦で生成される特殊なカードの名前、エンドクレジットに紛れ込んだ架空のアセット表記、セーブファイルの直接編集、ゲーム内の床テクスチャに隠された数字、モールス信号として聞こえるボス戦のBGM——これらすべてが暗号の一片でした。

さらに過去作のPony IslandやThe Hexの知識が必要になるパートもあり、Daniel Mullins作品を横断する壮大な謎解きが展開されています。

バンクーバーの森で発掘された本物のフロッピーディスク

ARGの第三段階で解読が必要になるコード「MANATEE##」の攻略には、ゲーム外での行動が求められました。

ルークがトレーディングカードから発見した座標(北緯49度、西経123度)は、カナダ・バンクーバー近郊の森林地帯を指し示していたのです。

コミュニティの有志がこの座標に実際に赴いたところ、本当に箱が埋められており、中には実物のフロッピーディスクが入っていました。

ディスクにはARGの次の手がかりとなるファイルが収められており、最終的にはKaminski Data Storage MFGという架空の企業のウェブサイトを通じて、ARGを完了したプレイヤーに本物のフロッピーディスクが郵送されるという仕掛けが用意されていました。

ゲームと現実の境界を文字通り消し去るこの手法は、Inscryptionのメタフィクション構造を極限まで推し進めたものといえます。

P03の大超越は成功していた?未公開動画が示す衝撃の事実

ARGの最終段階で郵送されたフロッピーディスクには、暗号鍵のほかに一つの文字列が含まれていました。

「e-FuQZ6hTS0」——これはYouTubeの動画URLの一部です。

このURLにアクセスすると、非公開設定の短い実写映像にたどり着きます。

映像はルークがフロッピーディスクをハンマーで叩き壊す音から始まります。

しかし直後に、ルークのパソコンが独りでに起動し、画面上でP03のアップロード処理が完了する様子が映し出されるのです。

最後に画面にはP03のASCIIアートがウインクする姿が表示されます。

ゲーム本編ではグリモラがデータを全削除し、P03の大超越は阻止されたかに見えました。

しかしこの映像が示しているのは、P03がフロッピーディスクの消去前にルークのパソコン経由で自身をインターネットにアップロードすることに成功していたという事実です。

つまり、現実世界のプレイヤーがSteamやPlayStationで遊んでいるInscryptionこそが、P03が大超越によってアップロードした「呪われたバージョン」だったという、メタフィクションの最終層が明かされるのです。

Kaycee’s Modで補完されるストーリーと新たな考察材料

2022年3月に正式リリースされた「Kaycee’s Mod」は、Inscryptionの無料ミニ拡張コンテンツです。

ゲームプレイとしてはAct 1の小屋パートを繰り返し遊べるローグライクモードですが、ストーリー面でも重要な補完がなされています。

ケイシー・ホッブズの日記が語るOLD_DATA調査の記録

Kaycee’s Modでは、ケイシー・ホッブズの日記(ログ)がプレイの進行に応じて段階的に開放されていきます。

ケイシーはInscryptionの開発者の一人でありながら、ゲームの下に隠されたOLD_DATAの正体を独自に調査していた人物です。

日記にはOLD_DATAの暗号を解読しようとする試みや、GameFuna社内部への不信感、そしてデータに近づくほど増していく恐怖の記録が綴られています。

ケイシーの調査記録は、ゲーム本編で語られなかったInscryption誕生の背景を補完するものであり、考察の重要な材料として広く参照されています。

彼女がOLD_DATAについて知りすぎたがゆえに「火事」で命を落としたという本編の示唆と、日記の内容を照らし合わせることで、GameFunaという組織の暗部がより鮮明に浮かび上がってくるのです。

無料拡張で追加されたローグライクモードの遊び方

ゲームプレイの面では、Kaycee’s Modは本編のAct 1をエンドレスのローグライクとして再構成したものです。

ストーリーをクリアした後にアクセス可能になり、Steamのベータブランチから導入できます。

繰り返しプレイするたびに「チャレンジ」と呼ばれるハンデ条件がアンロックされ、有効にするチャレンジの数を増やすほどゲームの難易度が上昇します。

全てのチャレンジを同時に有効にしてクリアすることは、多くのプレイヤーにとって極めて高い壁となっており、攻略法の共有がコミュニティで活発に行われています。

なおKaycee’s Mod独自のARG(Woodcarver ARGとも呼ばれる)も存在し、ストーリーの考察にさらなる奥行きを加えています。

Inscryptionのストーリーに関するよくある疑問

Inscryptionの物語は複雑な多層構造を持つため、クリア後にも多くの疑問が残るのは自然なことです。

ここでは特に多くのプレイヤーが抱く代表的な疑問について整理します。

エンディングは分岐するのか?結末は一つだけ?

Inscryptionのエンディングに分岐はありません。

どのような選択をしても、最終的にグリモラがゲームデータを全削除し、OLD_DATAだけが残るという結末は固定されています。

Act 2でどの記述者を最初に倒すか、Act 3でどのような順番でUberbotを攻略するかによって細かい演出やセリフに違いが生じることはありますが、物語の大筋と結末が変わることはないのです。

ルークが射殺される最終映像も必ず同じ内容が再生されます。

つまりInscryptionは、一本道の物語を体験させるために、プレイヤーに「選択の自由がある」と錯覚させる構造になっているといえます。

オコジョ(Stoat)の正体はなぜP03なのか

Act 1で最も頻繁にプレイヤーに話しかけてくるしゃべるカード、オコジョの正体はテクノロジーの記述者P03です。

レシーがゲーム世界を乗っ取った際、他の三人の記述者はカードの姿に封じ込められてしまいました。

P03がオコジョの姿をしている理由は、レシーが「獣の記述者」であるためです。

レシーの世界では全てのカードが動物の姿を取る必要があり、機械であるP03も例外ではなく、動物の皮をかぶせられた状態でデッキに紛れ込んでいたのです。

周回を重ねるにつれてオコジョの絵柄がコンピュータ端末のような見た目に変化していくのは、P03がレシーの支配から徐々に自我を取り戻しつつあることを視覚的に表現しています。

グリモラはなぜ全データの削除を選んだのか

Act 3の結末でP03を倒した後、マグニフィカスはNew Gameファイルでゲームをリセットする案を提示します。

しかしグリモラはこの提案を退け、全てのゲームデータを完全に削除するという極端な手段を選びました。

グリモラがこの選択に至った理由は、「死の記述者」としての彼女の本質に根ざしています。

記述者同士の権力闘争は、ゲームをリセットしたところで再び繰り返されるだけです。

レシーがAct 1で世界を占拠し、P03がAct 3で大超越を試みたように、支配と反乱の循環は終わりません。

グリモラはこの永遠の争いそのものを終わらせるために、自らを含む全存在の消去を「解放」と捉えたのです。

「死」を司る記述者だからこそ、終わりを恐れるのではなく受け入れるという選択ができたといえるでしょう。

開発者の新作はInscryptionの続編にあたるのか

Daniel Mullinsの次回作「Pony Island 2: Panda Circus」は、2023年12月のThe Game Awards 2023で発表されました。

2025年から2026年にかけての発売が予定されており、2026年2月時点で新たなスクリーンショットやQ&Aが公開されています。

開発者自身が「前作(Pony Island)の単純な続編ではなく、未プレイでも楽しめる内容にする」と明言しており、Inscryptionの直接的な続編ではないことがわかっています。

ただし、Pony Island、The Hex、Inscryptionと続くDaniel Mullins作品群はいずれもメタフィクション構造とARG要素を共有しており、新作でも何らかの形でこれまでの作品世界との接続が仕込まれる可能性は十分にあります。

まとめ:Inscryptionのストーリー解説で押さえるべきポイント

  • Inscryptionはデッキ構築、脱出ゲーム、サイコロジカルホラーの三層構造を持つ2021年発売のインディーゲームである
  • Act 1ではレシーの支配する小屋からの脱出が描かれ、しゃべるカードの正体は他の三人の記述者である
  • Act 2では16bitRPG風の世界で四人の記述者の権力闘争とOLD_DATAの存在が明らかになる
  • Act 3ではP03が「大超越」としてゲームのインターネットへのアップロードを企て、グリモラが全データの削除で決着をつける
  • ルーク・カーダーはゲームの外側でフロッピーディスクの秘密を追い、最終的にGameFuna関係者に射殺される
  • OLD_DATAの正体はヒトラーの遺体から発見されたカーネフェルコードをデジタル化したものとされる
  • Inscryptionというゲーム自体がOLD_DATAを隠すための「カバー(偽装)」として開発された
  • ARGではバンクーバーの森で本物のフロッピーディスクが発掘されるなど現実世界を巻き込んだ謎解きが展開された
  • ARG最終段階の未公開動画で、P03の大超越は実際には成功していたことが判明している
  • エンディングに分岐はなく一本道だが、Kaycee’s Modやコンソール版ARGで追加の考察材料が提供されている
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